おたすけ会議 6

 

 

 

いよいよ、本描きに入りました。

下絵ではなく、本気、本物の原画描き。

 

まずは、前見返しから。

表紙をひらいたところにある、文章のない部分のことです。

本によっては、ただの無地であることも多いのですが、コヨセさんは、いつもこの見返しから絵を描きはじめます。

BGMがそっときこえてくるような感じ。

 

なんの絵か わかりますか?

そう、お弁当箱!

 

これは海老フライだね。こっちはポテトサラダかな。

スパゲティナポリタン。カレーピラフ。いちごとホイップクリームのサンドイッチ。

キャラ弁もあれば、フルーツ弁当もあれば、質実剛健ハイカロリー弁当もあります。

韓国料理や、ヨーロッパで流行り始めた Bento っぽいのもあります。

お料理好きのコヨセさんは、ひとつひとつのお弁当の味や個性まで考えているのです。

 

「メニューを考えるだけでも大変だったでしょ」

「これは時間がかかりますねえ。彩りよく並んでいるし」

「ねえねえ、これって、どんな料理なの?」

 

口元ゆるみっぱなしで、わいわいキャイキャイさざめく、おたすけチーム一同。

しかし、こういうとき、いちはやく正気に返るのが編集者ウエムラであります (写真左)。

笑みをうかべて、やんわりクールに言い放つ…。

 

「それはそうとコヨセさん。あわよくば三枚、少なくとも二枚は完璧な原画をしあげてくるお約束ではありませんでしたっけ?」

 

 

 

ぐっ、と つまるコヨセさん。

 

「…あ…う…まあ、その、いろいろ、問題があってね…(もごもご)」

ウエムラ編集者の視線に耐えかねて、とりあえずペットボトルの栓を力いっぱい捻るの図。

(ちなみに、ホワイトボード記載の文章は本件とは無関係であり、コヨセさんが8月中旬に発送されるわけではありません)

 

かくして、納得のいく絵がかけるまで時間をかけたいコヨセさんと、その心情を最大限に尊重しつつも刊行スケジュールをにらみ、お尻を叩かねばならぬ編集部との攻防戦、その熱き闘いの火蓋が切って落とされたのであります〜!

 

え、わたし?

わたしは高みの見物ですよ。

…と言いたいところですが、おたすけチームは一丸となって、あの手この手でコヨセさんを応援しなくてはなりません。

 

 

 

そこで。

まずは、つぎの日に、庭の芝刈りをしました。

なぜって今回のお話では、おたすけこびとがユンボバリカンを使って雑草を刈るから。

 

ユンボバリカンのかわりに、電動バリカン使用。

目線を低くして、身長2.5センチのおたすけこびとたちのきもちになって、炎暑の陽ざしの中で狭い庭の芝ジャングルと格闘しました。

小さなバッタがひょいひょい逃げていきました。

 

……あんまり役に立ちそうにないですか?

ま、とりあえず、こびと目線で、コヨセさんの伴走をいたします。

 

 七冊目のおたすけこびと制作裏話は、こちらからどうぞ。

  http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=69

 ◆http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=71

  http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=82

 ぁhttp://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=85

 ァhttp://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=88

 

ハンカチともだち、あとすこし

 

 

気が遠くなるような暑さのなか、「ハンカチともだち」は、じりじりと進んでいます。

 

じつは、テスト校の1回目は、けっこう、アッチャ〜(@_@;)だったので焦りました。。

ピンクはよかったのだけど、緑がケバケバで…。

パソコン画面でみる色と、うちのプリンターで印刷する色と、本のための紙に実際のインクで印刷した色と、みんな違うんですもん。

それでも、テスト校をもとに調整した結果、2回目のテスト校では、納得のいく色がでてきました。ほっ。

 

デザイナーの鈴木千佳子さんが選んだフォントの文章をあわせたレイアウト紙も到着。

フォントというのは、活字の形のことですが、それによって本の雰囲気がずいぶんかわるのですよ。

 

このフォントは、その名も「ちびまるゴシック」。うふ。

のほほんとした感じが、物語にぴったり。

デザイナーの手にかかると、微妙なバランスが ぴたっと決まります。

 

 

紙の端っこにある線は「トンボ」といって、本の実際のサイズを示すものです。

トンボに合わせて紙を切り…

 

 

ノリで貼りつけて、本のかたちにします。

 

 

これをめくりながら、何度も読みます。

なるべく、はじめて読むひとのきもちで。

 

すると、たちのぼってくるのが、この本の世界の香り。

ふわりと たちのぼるものを、いくらか距離をおいて他人事のように味わいます。

そしてまた、冷ややかに アラ探しをつづけます。

 

そんなこんなをしているうちに、表紙のデザイン案も送られてきました。

およその方向性は話しあいながら進めているとはいえ、新鮮な驚きに胸がときめきます。

 

はだかんぼうの赤ちゃんに オーダーメイドの服をしたててもらう気分。

 

 

 

あとすこし、です。

夏の暑さがやわらぐころに、こんな服をきた本が お目見えいたします。

 

 

おたすけこびとが いっぱい!

 

高知県立文学館でおこなわれた、コヨセさんのワークショップ。

写真がとどきました。

(いや、ほんとはとっくに届いていたのですが、わたしがグズグズしてまして…、ごめんなさい)

 

白い模造紙二枚に、子どもたちが顔をかき、色を塗った おたすけこびとがたーくさん。

にぎやかな歓声がきこえてきそうですね。

 

でも、ん?

こびとの下には、なにやら黄色い絵が……。

 

はい、じつは、はじめにコヨセさんが模造紙に重機の絵を描いたのです。

↓黒い太マジックで輪郭を描き、黄色と黒の絵の具で、ぐいぐいとライブペインティング。

 

 

でもコヨセさんって、寡黙に、ゆっくり丁寧に…のヒトなので、はじめこそ、わぁ〜と感心して喜ぶ子どもたちも、じきに退屈しちゃいます。(^_^;)

 

そこで、あらかじめ、おたすけこびとの輪郭を印刷して切り抜いた紙をわたし、子どもたちにもお絵かきをしてもらえば間が持てるだろうという作戦。

かつて私たちが気仙沼の幼稚園や小学校を訪問しながら練ってきたワークショップです。

 

作家も、子どもたちも、それぞれの手もとをみつめて黙々と絵を描く 素敵な時間。

 

コヨセさんは、その時々で、パワーショベルを描いたり、クレーン車を描いたり。

そして、子どもたちが作ったカラフルこびとを、コヨセさんの重機の上にぺたぺた貼れば、世界で一枚しかない「コヨセ・ジュンジとみんなの合作」のできあがり!

 

……の、はずなのですが。

 

参加者が多かったのか、一人あたりのコビト枚数が多かったのか、コヨセさんの絵がなかなかできあがらなかったのか…などの理由により、コビトの大群に埋め尽くされる重機の図になったという次第。(^_^;)

 

でも、とっても楽しそうな熱気がつたわってくるので、ノープロブレム。

ほら、似顔絵入りサインを描くコヨセさんの うれしそうな顔。

 

 

高知のみなさん、おたすけこびととコヨセさんを温かく迎えてくださって、ありがとう。

 

はたらく車の展覧会は、まだまだ続きます。

とても魅力的な展示のようですよ。

どうぞお出かけください。

 

https://www.kochi-bungaku.com/exhibition/3894/

 

 

おたすけ会議 5

 

5回目の おたすけこびと会議。

月イチ開催なので、もはや月例おたすけ会議。

 

コヨセさんがさらに精度をあげて描いてきてくれた着彩ラフに、実寸に切ったテキストを載せて検討しました。

だってコヨセさんたら、絵に没頭するとテキストの場所まで絵で埋めちゃうんだもーん。

テキスト入れるところがなくなると困るから、忘れないようにね〜。

…というのは、半分ホントですが、それだけではありません。

 

完成予想がみえてきたラフにテキストを貼り込む この作業が、わたしはとても好きです。

絵+文でなりたつ「絵本」が、生き物として鼓動を打ちはじめる瞬間だから。

 

固唾をのんで見守って、1+1が3や4になりそうであれば、うっとり、にやにや。

2でしかなければ、せめて2.2にならないものかと考えます。

テキストを置く位置によっても、絵の力を後押ししたり、削いでしまったりするので。

たまに1+1が1のこともあって、そんなときには、ばっさり切ります。

 

絵本の絵と文は、それぞれに異なる旋律。

うまくあわさると多声音楽のように響きあい、奥行きが増すものです。

 

その確認のためには、ひとりじっくり読むのはもちろん必須ですが、チームみんなでにらんでカンカンガクガク議論するのも、またヨロシイ。

全員が「いいね」と頷けば合格だけど、必ずしもそうはいきません。

てんでばらばら違うところに違和感を覚えるときもあって、会議は紛糾…。

でも必ず、より良い着地点がみつかるのです。

これぞ、おたすけ会議の醍醐味なり (^o^)!

 

 

すべてを受けとめて、長距離ランナーのように絵を描き続けるコヨセさん。

取材へもでかけます。

 

前回、若手編集者が段取りをつけてくれた取材先で、おめあてのトラックについて解説をきくコヨセさん。赤いヘルメット、すてき。

(全身の写真がほしかったのに、撮ってきてくれなかったんです(u_u) トラックの写真ばっかり。。。)

 

 

↓社員のみなさんも色とりどりヘルメット。おたすけこびとみたい〜(^o^) ←逆転の連想

 

 

 ↓ほら、ざっくりとした鉛筆線の愛らしいこびとたちを ごらんくださいまし。

 

 

↓既刊本を突きつけられて(?) タイトルスペースが狭いよと責められているコヨセさん。

   絵に夢中になるうちに文字スペースが狭くなるのは、絵本画家アルアルですのよ (^。^)

 

 

そろそろ、本描きにかかるそうです!

 

きょうりゅうたちの ペット入手経路

 

どこからも横槍が入らず、めでたく契約書がかわされたとのことで、きょうりゅうシリーズ絵本の翻訳をはじめました。

 

秋に刊行予定の一冊は  "How Do Dinosaurs Choose Their Pets?"

直訳すると「きょうりゅうたちは どのように ペットを えらぶのか?」となります。

 

…なんのこっちゃ!? 

じつは、このシリーズに登場する迫力満点のきょうりゅうは、すべて人間の子どもたち。

きっと作者は、とほうもなくパワフルで わからんちんの子どもに振り回された経験が豊富なのでしょう。

 

今回、きょうりゅう(=子どもたち)は「ペットをかいたい!」と言いだします。

子育てアルアルですな。

 

動物がいるのは動物園!ということで、動物園からトラをかついできちゃったりします。

きょうりゅうですから、ゾウをひっぱってくるのも造作ありません…。

 

 

火を吹くドラゴンも、ペットとして飼育対象になります…。

 

 

…などなど、おもいっきり破天荒な暴れっぷり。

子どもの願望や、やってくれちゃいそうなことが、ドスンドスンと描かれます。

「そ、それは、さすがにまずいのでは」と焦っちゃう。

 

その頃合いをみはからって、いっきに正道に導くのが、当シリーズの戦法です。

「まさか、そんなことしないよね。きょうりゅうだもの。ちゃんとわかってるよね」って。

 

だまし討ちのような展開ですが、にやにやげらげら笑ったあとの子どもたちは、心が解放されているのか、素直に頷いてしまうようです。

はい、なにをかくそう、この本の正体は、しつけ絵本であります。

大人って、ずるいよねえ。

いつもながら作者たちの狡猾さに苦笑します。

(…って、わたしもまちがいなく、その一味ですが…(^_^;)

 

 

かくしてめでたく、大型危険動物ではなく、犬、猫、うさぎ、ハムスターなどの小さく愛らしい動物を飼うことで妥協する きょうりゅうたち。

 

 

さて。

みなさんは、ペットを飼うとき、どこへ行きますか?

 

この絵本のきょうりゅうたちが行くのは、以下の三つ。

 

  shelter (シェルター)

 ◆farm (農場)

  pet store (ペットショップ)

 

ここで翻訳者の深い悩みが始まります。

 

,離轡Д襯拭爾箸聾でなどの保護施設のことですが、「シェルターに いぬを もらいにいく」ときいて状況を理解できる幼児が何人いるでしょう。

大人の読者でも核シェルターやDVシェルターなどを想像してしまうかもしれないので、このカタカナ用語そのままは使えません。

 

日本でも、小動物の保護と一時飼育および譲渡斡旋を扱う組織は官民ともに増えてきましたが、その呼び名が一定しておらず、認知度も高いとはいえないのが現状です。

 

 ほごしせつ (保護施設)

 どうぶつあいごだんたい (動物愛護団体)

 さとおやかい (里親会)

 

うーん。

漢字だと内容を把握できるけれど、平仮名になると、すんなり頭に入らないですよね。

絵本の文章の基本は平仮名なので、悩ましい…。

 

 

△痢屬里Δ犬腓Α廚癲▲ぅ泪ぅ繊

町に住む子どもたちが郊外にでかけて、広々とした農場で繁殖された犬猫などを分けてもらうのは、欧米の絵本や児童文学によく描かれる情景です。

でも、日本の稲作農家や養鶏業の方が「子犬、わけてください」と言われたら目をパチクリしちゃうはず。

作品によってはもちろん異文化紹介としてOKですが、この本の場合、異物感のデメリットのほうが大きいかな。

 

 

の「ペットショップ」。

これは問題ありませんね。そのまま使えます〜。

……といいたいところですが、じつは、ここが最大の難所なのであります!

 

なぜなら、現在、欧米のペットショップのありかたが、日本のペットショップとは、かなり違う方向へと急速に変わりつつあるから。

名前だけ同じで内容の異なる言葉をカタカナに置き換えることは、翻訳ではありません。

むしろ誤訳。

 

絵本は、未来をひらく子どもたちが読むものです。

それも何度もくりかえし、くりかえし、読んでくれる。

すくなくとも五年か十年先までは、言葉の賞味期限を想定しなくては。

 

これからの日本の子どもとペットの望ましい出会いの場は、どこでしょう。

小動物飼育歴半世紀を超える私は、翻訳の範疇で可能な匙加減をさぐっています。

 

 

…へへ。

なにやら大袈裟な話になりましたが、つづきは、またね。(^o^)

 

 

 

奮闘する鴨ママ

 

梅雨の晴れ間のある日のこと。

机にむかって仕事をしていたら、窓の外で、ガアガアと激しく鳴く鴨の声。

 

わけあって、わたしは鴨語に堪能なので、それが緊急警戒警報であることを即座に理解しました。

窓からのぞくと、住宅街のアスファルト道路を カルガモが疾走しているではありませんか。

大声で騒ぎながらも、飛ばずに走っているだけ。

 

どうしたんだろ。

まだ飛べない若鳥なのかしらと眺めていたら、そのあとを、猫が猛ダッシュで追いかけていきました。

 

↓この方です。

(過日、うちの庭の あけび棚に登ってキジバトを狙っていたのを窓越しに撮影。たぶん前科者)

 


 

猫に追われた鴨は翼をだらりと広げ、いまにも捕まりそうな格好でバタバタ逃げ回り、空き地の草むらに逃げ込みました。

もちろん猫も、草むらへ。

 

あちゃ〜。

つかまっちゃったかなあ。

わたしはハラハラしつつ、ようすを見に出ていきました。

 

草むらは、静まりかえっています。

断末魔の叫びもきこえなければ、鴨肉に食らいついている猫の気配もありません。

 

そのとき、ずいぶん離れたところから低空飛行の鴨がやってきて、わたしの頭上を旋回し、アスファルト道路に降りたちました。さっきの鴨です。

 

あららら、なんでまた舞い戻ってきちゃったの? 迷子?

ていうか、あんた、飛べたのね。なんでさっきは、飛んで逃げなかったのよ?

 

鴨は首をのばして、大きな声で鳴きました。

でも、私の質問にこたえたわけではありません。

ええ、わけあって鴨語に堪能な私は、これも即座に理解しましたとも。

 

通訳してさしあげましょう。

「クワクワクワクワクワ!? 」 すなわち「どこ? あなたたち、どこにいるの?」

 

すると、いくつもの声が一斉にこたえました。

「ピヨピヨピヨピヨ !」 すなわち「ここだよ、かあちゃん! ここにいるよ !」

 

 

道路脇の水路に、卵からかえってまだ数日のヒナが4羽いました。

 

どうやらさっきのペタパタ駆け足と、翼をひきずって逃げたのは、猫の興味をヒナたちからそらすための「偽傷行動」だったようです。

じぶんが傷ついたふりをして、敵をおびきよせる作戦ですね。

話にはきいたことがありましたが、本物を見たのは初めてです。

 

 

ヒナたちは愛らしい声で甘えます。

「ヒヨヒヨヒヨ、ヒヨヒヨヒヨ」すなわち 「かあちゃーん、こわかったよ〜」

 

鴨ママは、優しい声でこたえます。

「クウクウクウ、クウクウクウクウ」すなわち「もう大丈夫よ。さあ、いきましょう」

5羽そろって水路をすいすい泳いでいきました。

めでたし、めでたし〜!

 

 

 

…のはずだったのですが。

 

 

 

その数時間後。

近所の人たちが、水路をのぞいてうろうろしています。

幼稚園や学校帰りの子どもたちとママたち、登下校見守りのおじさん、おじいちゃん、おばあちゃんと、その人数は、増えるばかり。

 

しかし、みなさんの表情は暗い。

さっきより水路の水嵩が減っていて、4羽のヒナがU字孔から上がれないというのです。

ヒナが上がれないから、カルガモママもその場を離れずガアガア鳴いて、ヒナに見本をみせているのかU字孔を出たり入ったりを繰り返すばかり。

 

おそらくカルガモ親子は、水量が豊富な雨の日に、近くの田んぼから、どんぶらこっこと泳いできたのでしょう。

しかし現在、この水路の前にも後ろにも、ヒナたちが自力で上がれる場所はありません。

雨が降るまで待つ?

その前に猫かカラスの餌食になっちゃうよね…。

 

かくして、ヒナ救出作戦がはじまりました。

ブロックや板切れをU字孔の中に入れて行動範囲を狭めていき、足場用の鉄板で設置したスロープから、ヒナを上がらせる計画です。

全部のヒナを捕まえて100mほど離れた田んぼに放せば、鴨ママは後からついてくるはず。

 

共同作業で、わりと手際よく3羽のヒナを網ですくい、バケツに入れることができました。

ヒヨヒヨヒヨヒヨと大騒ぎだけれど、ごめん、ゆるして。

 

ところがこのとき、登下校見守りのおじさんが、たからかに叫びました。

「親もつかまえたぞ〜!」

 

カモとりごんべえ級の腕前に脱帽ですが、大人の野鳥にとって、どれほどの衝撃か…。(>_<)

虫採り網の中で暴れる鴨ママの翼を、おじさんが、むんずとつかむ。

きゃ〜〜〜やめて〜〜〜〜。野鳥の翼を折ったらアウト!

 

私はしゃしゃり出ていき、翼と脚をたたんで抱えこみ、かるく目を覆ってやりました。

こうすると、鳥は落ち着くのです。

諦めちゃうだけかもしれないけど、少なくとも無駄な消耗と怪我を防ぐことはできます。

 

ああ、一刻も早く田んぼに放してあげたい。

けれど残る1羽のヒナが逃げ回り、なかなかつかまりません。

 

鴨ママは、かぼそい声で クゥークゥーと囁くように鳴いていました。

「…みんなぁ、気を、たしかに、もつのよぉ〜 (といいつつ、鴨ママはもう気絶寸前)」

バケツの中の3羽のヒナも ヒィヨ ヒィヨ。「えーん、こわいよぉ。めそめそ」

 

4羽目のヒナをつかまえたのも、カモとりごんべえおじさんでした。お見事。

 

そしてようやく、田んぼにリリース。

 

親子は、どびゅーっ!と高速リニアモーターカーみたいに田んぼの水面をすっ飛んでいき、はるかかなたで、そろって水草をついばみはじめました。

 

やれやれ、こんどこそほんとに、めでたしめでたし。

見守る子どもたちのまなざしの、やさしかったこと。

 

 

そうそう。

わたしが鴨語に堪能なそのわけは、十年ほど前に鴨と暮らしていたためです。

大雨の日に、巣が壊れて水びたしになり、カラスにつつかれていたカルガモの卵を、息子が拾ってきてしまったから。

 

その卵から孵化した2羽のカルガモを放鳥するまでのひと夏を、ノンフィクションに書きました。『カモのきょうだい クリとゴマ』。

 

じぶんでいうのもナンですが、いい本です。

その写真を、ちょいとご紹介しましょう。

 

↓鴨のヒナは、卵から孵ったときに見た生き物を親と思って、ついて回ります。

 だからわたしは、カルガモのお母さんでした。

 仕事中のわたしの注意をひこうと、キーボードの上にきて私をみつめるクリちゃん。

 可愛さMAX♡

 

 

↓けれど野生に返すことを目標として、獣医さんの協力も仰ぎ、せっせと育てました。

 

 

↓自然のなかで生き抜く力をつけさせるべく、お勉強もいろいろさせました。

 カモのお母さんになるって、ほんとうに大変。どっと疲れた夏でした。

 でも教えてもらったことが多かったので、本にしたのです。

 

 

 

案外、あるものですよ、わたしたちのくらしのすぐ傍らにも。

眩しいほどの力強さをもつ野生が。

 

生き物のあたたかさも、つめたさも、糞も、血も、においも、人間とはちがう「ことば」で交わしあうコミュニケーションのことも、

とくに子どもたちには知っておいてほしい。

それはそのまま、きみたちが暮らす地球の豊かさだから。

 

(それにしても、カモにかまけて、仕事ほったらかしの1日でした。。あした、ガンバロ)

 

 

おたすけ会議 4

 

 とき :  入梅前の平日。

 

 ところ :  都心の一等地にある オフィスビルの一室。

           超有名企業をテナントにもつ当ビルのセキュリティ管理は極めて厳しい。 

             ここまで入ることを許される部外者が少ないなか、男女2名のゲストが入室。

 

挨拶もそこそこに、すぐに真剣な表情で商談をはじめる男性ゲスト。

建設重機がびっしりと描かれたノートを鞄からとりだし、彼が希望する特殊な機械について語る。

 

 

そのノートには、国内に点在する小規模メーカーの連絡先も記載されている。

「この機種の、右手後方約30度を下から眺めた写真が欲しい。

 まずはパンフレットを入手してくれませんか。

 できれば関東圏内で実物の写真を撮れるところがあるといいんだけど」

「わかりました。すぐに手配します」

若手社員は素早くスマホになにやら打ち込む。

 

 

しばらくして、会社側の女性上司が腕組みをして難色を示す。

「うーん、ブロロロロ…の迫力がイマヒトツかなあ。

ひとつには、お弁当箱の角がはっきり見えていないせいかしらね」

 

しかしこの指摘に対して、男性ゲストは、きっぱりと抗弁する。

「いや。そもそも角ってもんが無いのよ。このお弁当箱は、小判型だから」

 

一同、ハッとして、うなずく。

「小判型かあ…。たしかに、3歳児のお弁当箱は角型じゃないかも」

「角型だったら男子高校生のドカ弁だもんね」

「でもさ、角がまあるい角型はあるよ」

「ところで、お弁当包みのハンカチタイプって、3歳児には難易度高いのでは?」

「4歳児になると、園で包み方をお勉強するみたいだよ」

しばし、園児のお弁当に関する検証がつづく。

 

さらに、なにかと注文の多い女性ゲストが、奇妙なことを言いだす。

「笛をふいてバッタが通らないように交通規制をしているコビトがほしい!」

 

男性ゲストは目をしばたたき、困惑。

「え、なにそれ。笛をふきながらバッタを止めるってどういうこと?」

 

すると、勘の良い若手社員が やおら立ちあがり、交差点の中央でピーッピッピと笛をふき、きびきびと手信号で車をさばく警官のジェスチャーを実演。

 

「ああ、なるほどね…」

男性ゲストはうなずき、そのポーズをノートに描きこむ。

 

 

 

…そうです。

このへんてこりんな「商談」は、おたすけこびと会議です。

男性ゲストは、絵描きのコヨセさんで、注文の多い女性ゲストは、もちろんわたし。(^o^)/

 

午前11時から午後5時過ぎまで、ランチ中も打ち合わせ続行で、みっちり6時間以上。

おたすけこびとワールドのリアリティを深めるために、総力戦で検討を重ねます。

 

絵本をくりかえし読んでくれる子どもたちが、そのたびになにかしら心ときめく発見をしてくれるようにと願って。

 

 

電子のお絵かき

 

作&絵ですすめている絵童話「ハンカチともだち」。

紙にペンとインクで描いた線画を、スキャナで取り込み、パソコンで合成中です。

 

絵本にしてはだいぶ長め、児童文学にしては短めの本なので、インクは、文字にも使う色の黒に加えて、カラーを1色か2色だけ使います。

 

天使のかいかた」や「カッパのぬけがら」などは、すべてこの方法で作ってきました。

いちばん最初は「ぼくには しっぽがあったらしい」。

 

今から20年前に、絵と文章を 半々の割合で作るかたちの本にしようと、理論社のY編集者にいわれて、手探りではじめたことです。

ちょっと絵本。ちょっと児童文学。ちょっと漫画。

 

夢がむくむく広がりましたが、本を作りはじめると、どこまでを私の手もとで行い、どこからを印刷屋さんにお任せするべきか迷いました。

本にする以上、印刷屋さんに頼むわけですが、完全にできあがった原画をわたして「これを忠実に再現してね」と言うことができないからです。

わたしの頭のなかにあるものを、かたちにして提示できないもどかしさがありました。

 

とりあえず線画を描き、文章はワープロ打ちした紙を切って、糊で貼りつけました。

それから色見本帳の小さなチップで色をきめ、色鉛筆を塗ったトレーシングペーパーを何枚も重ね、テキトーな勘で決めた色の濃度を書き込んだ付箋をいっぱいつけて、印刷屋さんに試し刷りをしてもらいました。

待つこと、一週間。

刷り上がったものをみて「おお〜、想像してたよりいい!」と喜ぶときもあれば、「なんじゃこれ〜」と凹むこともありました。

それを何度もくりかえします。

職人さんの腕と勘に感嘆することもありましたが、やはり無駄が多かったものです。

 

やがて月日は流れて…。

あるとき、デザイナーの森枝雄司さんに言われました。

「もっと、じぶんでできるはずですよ。今ならね」(←森枝さんは、わたしのMacの師匠)

 

いつのまにかパソコンが進化して、一般人でもできる範囲が広がっていたのです。

わたしはパソコンが苦手です。(キッパリ)

クルマの運転と、鉄棒とマット運動と、数学と生タマネギの次くらいに苦手。

でも、作りたい本の想像図につられて、べそをかきながらフォトショップで画像処理をするようになりました。

以来、各方面に多大な迷惑をおかけしつつ、のろのろと進歩中です。

 

今回の大躍進は、電子のペン、ペンタブレットを導入したこと。

電子だろうがなんだろうが、ペンは、ペンでした。少なくともサインペン程度には。

その結果、マウスでお絵かきしていた頃は付き物だった手首の腱鞘炎を未然に防げました。

なんてえらいんだ、ジブン! 

目がしょぼしょぼの梅干しみたいになっても、肩胛骨から肋骨にかけて歪んでいますねと接骨院でいわれても、連日、偏頭痛薬をのんだしても、最新テクノロジーの進化とともに、わたしも進化しているのです! …………たぶん。。

 

 

その真偽は、さておき。

今回、ハンカチチームのアドバイザー、鈴木千佳子さんに選んでもらったテーマカラーは、DIC2009。

ちょっと甘酸っぱい香りのただよう ふんわりピンクが、主人公 はるちゃんの色。

 

そして DIC2136は、副主人公 ミヨンちゃんの色。

クールで目を惹くけれど、やわらかな水色も含む緑です。

 

どの色も、100%で使うのと、50%や10%で使うのとでは、まったく違う色になります。

黒をうすめた灰色を混ぜれば、また違う色になります。

絵の具をまぜて色を作るのと一緒です。

 

 

そこでまずは、それぞれの色の濃度、および、黒をかけあわせた変化がわかる表を印刷所に作ってもらいました。

ここから使いたい色を選ぶので、わたしはこれを「パレット」と呼んでいます。

同時に、絵のテスト刷りもお願いしました。

 

パレットも、テスト刷りも、本番で使う紙に刷ってもらいます。

同じインクでも、紙によって、色が違って見えるからです。

紙の白さによっても違うし、つるつるの紙と、ざらざらの紙でも、発色が異なります。

 

さあ、準備万端。

あとは、テキトーな勘で、やっていくしかありません。(←さいごは、やっぱりコレ (^o^)

 

 

 

おたすけ会議 3

 

3回目の おたすけ会議を行いました。

コヨセさんのラフもカラフルになり、とてもたのしい。

 

なかでも、みんなが大喜びをしたのが、見返しでした。

何種類か描いてきてくれたのですが、その一枚をみて、口うるさいことには自信のある私とウエムラ編集者の口がとまりました。

新人編集者TK氏にいたっては、両手の指先を頬にあててすっかり乙女な表情。

(ちなみにTK氏は、身長189cm 、20代のクールな理系男子ね)

 

三人が発した言葉は「か、かわいい…」「たのしい…」「それ、ぜったいにいい!」

コヨセさんは、まず見返しで、おたすけこびと世界をぐいっと たぐりよせてくれます。

 

七冊目のおたすけこびとは、船。

もちろん、重機を運ぶ カーフェリーです。

 

全国のカーフェリーを調べたコヨセさんが、モデルとして白羽の矢をたてたのは、この船。

青森の かもしか号。

ほら、開口部が、かっこいいんですよ。(^o^)

 

 

コヨセさんは、さっそく青森にとんで乗船し、たくさんの写真を撮ってきてくれました。

上からの構図で写真を撮らなくちゃと タワーにのぼったら、130段ある階段の足元は網状になっていて、下が丸見え。波音とともに揺れる大海原…。

高所恐怖症のコヨセさんが がたがた震えながら撮影してきたという写真が、こちらです。

 

 

ところで。

この、たくさんのラフ。

 

 

裏はかならず、チラシなのです。

コヨセさんから送られてくる封筒も、ほとんどリサイクル。

 

 

ごく自然に身についている「あたりまえのこと」のようです。

ちょっと素敵、でしょ。

 

上野の森 親子ブックフェスタ2019

 

今年も五月晴れの上野公園で、子どもの本のおまつりがひらかれました。

ここにいると、少子化って、なに? 

子どもの本離れって、なんのこと? という気分になります。

 

うきうきと楽しそうな本好き親子はもちろんのこと、保育士さんや先生達、文庫主催の方などが遠くの街からやってきて、たくさんの本を買い求めてくださいます。

お仕事とは関係なく、ただ子どもの本が好きなだけという大人達も!

 

あ、いや。

先生や保育士さんたちも、仕事じゃないかも。

にこにこと自分のお財布をはたいて本を買ってくれていましたね。

「このサイン、子どもたちに見せびらかします」と語る大人げない笑顔に、こちらもニヤニヤしちゃう。

 

そしてほら。

写真のように、かわいい読者たちと  たっぷり お話ができるんですよ。

「こんにちは。お年はいくつですか?」

「……(3才)……」

いや、もう、たまらんわい。(デレッ)

 

かと思えば、

「あのっ、わたし、○○です! 去年もここで、この本と、あの本を買いました。わたしのこと、おぼえてますか!?」

ポシェットの紐を握りしめ、まっすぐな眼差しで問う六年生の女の子に、わたしの心拍数は倍になりました。

そう、下駄箱のかげで、いきなり、かわいい封筒のお手紙をわたされた少年みたいに。

本のなかで、作者のわたしと、読者のあなたは、一対一。

しずかにそっと心を通わせる。そういうものだものね。

ありがとう、うれしかったよ。

 

「のはらひめ」や「天使のかいかた」を読んで育ったという18才と進路の話もできたし、ブログを読んでくださる方と会うこともできました。

 

そんなふうに、いそいそと読者との交流をたのしむわたしの傍らで、コヨセさんはひたすら黙々と……似顔絵描き!

いつの頃からか、上野の森のコヨセさんは子どもたちの似顔絵をかくようになりました。

 

そのためか、リピーターさんが年々増えているような。

「2年前にかいてもらった本と較べるとお兄ちゃん顔になりました」とか「5年前のサインのとき、妹はまだ生まれていませんでしたけど、今回はこの子もお願いします」とか。

たのしい記念になりますよね。

 

いいことよ。

ええ、いいことなんですのよ。

だけど、時間がかかるのよね〜。

 

この日も夏日。

テントの中にいる私たちはいいとしても、長蛇の列に並んでいる方々が気になって、何度もコヨセさんをツンツンつつく わたし。

でも、ちっとも急がない(急げない)コヨセさん。

それが彼の魅力であることも理解して、汗を流しながら待っていてくださる みなさん。

ますます申し訳なくて、仕事一途な職人の親父にかわって頭を下げる下町のおかみさん気分でしたわよ。

 

 

コヨセさんほどではないにしても、午前の部のたかおさんも、時間がかかったなあ…。

たかおさんも、いつの頃からか、プリンちゃんの頭にのせる飾りもののリクエストを受け付けるようになってしまって…。

今年は最初からやる気まんまんで、営業部とともに、こんなサンプルリストを用意。

 

 

リストの中から選ばなくてもいいんですよ。

上野だけに、パンダのリクエストも多くありました。

 

  

 

思い思いに、奇抜な「飾りもの」をリクエストする みなさん。

 

  

 

カエルや、鯉のぼりや、京浜東北線なんていうのもあって、たかおさんは、四苦八苦。

たかおさんのツイッターで、今年の奇想天外大賞が発表されています。ごらんください。

 

 

ふう〜 やれやれ〜 ……の後ろ姿を撮影されていました。(^_^;)

しかもなにげに、お客さまのバッグには  LIFE IS SHORT.  READ MORE BOOKS !

熱いぜ、上野の5月。