17世紀のアヒルからメッセージ

 

 

 

  「いかなる がちょうも 孤島ではない

   一羽にて 全きものとは なりえない

   すべての命は 大陸の かけらであり

   大いなる大地の ひとひらなのだ」

 

……

うーむ。

意味深長なような。

意味不明のような。

 

ヨーロッパで話題の絵本 "Little Island" の冒頭に記されています。

翻訳作業は、まずここで行き詰まりました。

作品の鍵となりそうだけど、よくわからん…。

 

ジョン・ダック氏が1624年に残した言葉だそうです。

みなさんはジョン・ダックを、ご存知ですか?

私はじぶんの教養の無さをかみしめながら、ネット検索しました。

どんぴしゃヒットはありません。

 

詩句のほうも、どんぴしゃヒットはないものの、似たような文言が絡んできます。

そしてなぜかしきりにヘミングウェイの名前が…。

そういえば、ヘミングウェイの小説『誰がために鐘は鳴る』の冒頭にも詩がありましたね。

 

    " No man is an island, entire of itself, 

            every man is a piece of the continent,

            a part of the main."

 

でも、この詩の作者はヘミングウェイではありません。

1572年生まれのイングランドの詩人ジョン・ダンによるもの。

牧師でもあったジョン・ダンが、戦火の絶えないヨーロッパを憂えて晩年に説教のために書いた詩といわれています。

 

…あら?

もしかして、ジョン・ダックって、ジョン・ダンのパロディ?

 

そのようです。

だから" No man is an island..."が " No duck is an island..."にかわっています。

なんたって、ガチョウとアヒルのお話ですからね。

なぁんだ〜。

 

それにしても、「いかなる人も 孤島ではない」という表現は、かっこいいけど「いかなるガチョウも 孤島ではない」は水にぷかぷか浮いているガチョウを想像しちゃって滑稽ですよね。そこがパロディってことかしらね。

 

 

献辞によれば、著者にこの作品のインスピレーションを与えて励ましつづけてくれたのは、アヒルのベンさんだそうです。

おそらく著者のスムリティさんも、アヒルなのでしょう。

 

いえいえ。

冗談ではなく、本気です。

それというのも、この絵本は、小さな水鳥の島にくらす アヒル vs ガチョウの物語だから。

 

小さな島の豊かさに惹かれて、対岸から 牛、馬、豚など、ほかの動物たちがやってきます。

そのことに危機感を募らせたガチョウは議会で演説をふるって多数派となり、橋を壊してしまうのです。

なにによらず、壊すのって、簡単らしいですよ。

(↓手前のアヒルは、手伝いながらも泣いています…)

 

 

けれども、すっきりといい気分だったのは、最初だけ。

いろんなところに不具合が生じてきます。

そのようすは、とてもユーモラス。

 

  

 

  

 

そして結局、橋を再建することになるのです。

こんどは一気にとはいきません。

すこしずつ、すこしずつ…。

信頼と絆をつくりあげるのには、時間がかかりますから。

まして、いちどこじれた仲なら、よけいにね。

 

 

くすくす、にやにや笑える愉快なおとぎばなしです。

とくに集団で仲違いをしたことのある幼い子には楽しんでもらえるでしょう。

 

でも前回もお伝えしたように、これはイギリスのEU離脱をテーマに作られた絵本なのです。

おなじく小さな島国であり、外国の人達が大勢やってくるようになった日本の私たちにも、いろんな読み方ができそうです。

 

たとえば、子どもといっしょにこの本を読んで「あなたは、アヒル? それとも、ガチョウ?」と問えば、「アヒルにきまってるよ。みんな仲良くしなくちゃ」と答えてくれるでしょう。

ほんとにそうだよね、ずっとそう思ってくれるといいなと深く頷いてしまいます。

でもじつは、ガチョウの気持ちも、わからなくもないのです。

 

風通しのよい、多様性を許容する社会になってほしい。

その願いは変わりません。そのための努力もつづけていくつもりです。

 

いっぽうで、固有の文化はどう変質していくのか。

コンビニとチェーン店ばかりが金太郎飴のようにつづく地方都市の風景のように、失うものがあるのではないか。

言語と教育はどう変化していくのか。

真剣に考えると不安があるのも事実です。

 

白か黒の二択にとびつくまえに、間に存在するグレイの階調を否定しないこと。

あるいは、異なる視点を想定したうえで選びとることが大切なように思います。

 

ふたたび、いいえ、何度でも問いましょう。

あなたは、そしてわたしはアヒル?  それとも、ガチョウ?

 

おたすけ会議 (8と9をとばして)10

 

わたしが報告をさぼっている間に、コヨセさんは遅々と、いえ粛々と絵を進めてくださり、

ほぼ月イチのおたすけ会議も10回目となりました。

ここまでくると構図も文章もほぼ確定し、絵をみせてもらうのがとても楽しみです。

 

今回のおたすけこびとの主役は「ふね」。

こびとたちの小さなフェリーが運行するのは、町の公園にある小さな池です。

 

まだ着色は完了していないのですが、あんまり綺麗な色なので公開しちゃいますね。

青い翳りのある色彩が、いかにも日本の池らしい。

さすがは水郷柳川で生まれ育ち、水辺の風景にこだわりのあるコヨセさんです。

 

 

いたずら者のカイツブリが、船をツン!

カイツブリは、鴨よりだいぶ小さな水鳥ですが、おたすけこびとたちにとっては鯨がぶつかったほどの衝撃でしょう。

 

一昨年、北海道の鮭のふるさと千歳水族館でじっくり水中から眺めたカイツブリが面白くて、登場させたくなりました。

 

コヨセさんも、絵を描くために井の頭公園の水生物館でカイツブリを観察したそうです。

 

 

水の中の世界が、夢をみるように描かれています。

少年時代のコヨセさんは、水の中の景色を眺めるのが大好きだったとか。

 

一同、うっとりとためいき。

 

…と、そのとき、ウエムラ編集者のたおやかな指先が、トントンと紙面をたたきました。

「このコビトが吹いてるの、トロンボーンですよね。かたちが微妙にちがいます」

 

 

ひょー。

そのむかし、オーケストラ部所属だったウエムラ編集者と、家族がたまにトロンボーンを吹くというTK編集者は、エア演奏を開始…。

突如、編集部に響き渡る金管アンサンブル。(嘘)

 

 

コヨセさんは、ぶつぶつ文句。

「そもそも、おたすけこびとのプロポーションでトロンボーンは無理なんだよ。腕がこんなに短いんだから」

でも即座にスマホで画像を検索し、それなりに修正。

細部まで徹底して妥協をゆるさぬ、おたすけこびとチームであります !

 

もちろん、船だけではなく、おなじみの重機の見せ場もたっぷりありますよ。

乞うご期待 !

 

 

 

 

 

 

 

きょうりゅうたちの安全教育

 

元気でやんちゃな子どもたちを、リアルな恐竜として描く 「きょうりゅうたちシリーズ」。

 

7冊目の原題は "How Do Dinosaurs Stay Safe" です。

直訳すれば「いかにして、きょうりゅうたちは安全なままでいるのか」でありますが、

「きょうりゅうたちの おーっと あぶない」を日本語版の題名としました。

 

主人公は、上級者用恐竜図鑑でもお目にかからないほど珍しい十種類のきょうりゅうたち。

(いやもう7冊目ともなると、どれひとつとして、きいた覚えがありません…。。

 名称表記については、いつも西塔香絵編集者が専門家に確認してくれます)

 

 

そんな十頭が、さまざまな危険に遭遇します。

とはいえ、肉食獣に襲われるわけではありません。

階段からころげ落ちたり、ハサミをもってころびそうになったり、自転車のよそみ走行やら、道路を横断するときなど、日常のヒヤリ・ハットは際限なく起こります。

活発で好奇心旺盛な子どもたちだからこそ。

 

「どうして、そうなっちゃうのかなあ?」と、やんわりと問いかけ、対策へとみちびきます。

ええ、「きょうりゅうたちシリーズ」は、れっきとした、しつけ絵本ですから。

今回は、安全教本であります。

 

それにしても、幼い子どものまわりには、ほんとうに危険が多い。

ニュースになってしまった痛ましい事件をみるたびに、胸がつぶれそうになります。

 

ちゃんと気をつけるんだよ。

大人も、きみたちをしっかり守るから。

願いをこめて、さいごの言葉を翻訳しました。

 

 これで あんしん。

 もう だいじょうぶ。

 こわいことなんて

 ひとつも ないよ。

 

 のびのび たのしく あそぼうね。

 うちの かわいい きょうりゅうちゃん。

 

 

 

ガチョウの選択 アヒルの懸念

 

イギリスの新作絵本を翻訳しています。

原書のタイトルは "The Little Island" (「ちいさな しま」)

 

あるところに どうぶつ村が ありました。

羊、馬、牛、豚、ガチョウやアヒルたちが、それぞれ すきなところに家をたて、めいめい 得意な仕事を分担して暮らしていたのです。

たまには もめごとも起こりましたが、いろんな動物がいれば、それはまあ、あたりまえ。

みんなは、おおむね満足でした。

 

ところが、あるとき。

村のはずれの小さな島に住んでいるガチョウたちが文句を言いはじめます。

 

「ここは ぼくらの島なのに、どうして羊や豚が いつもうろちょろしてるんだい。

 やつらは 島のおいしい果物をもっていっちゃうし、やたらと態度がでかい。

 そのうちに、ぼくらが 島から追いだされちゃうんじゃないか」

 

ガチョウは大声でガアガア騒ぎます。

そして会議をひらいて、対岸の動物たちとの往来を断つことを採択。

あっというまに橋を壊してしまうのです。

おなじ水鳥とはいえ、アヒルたちは対岸の動物たちとの自由な往来を望んでいるのですが、多数決で敗れてしまいます。

議会制民主主義ですからね…。

 

 

はい、そうですとも。

冒頭の画像にあるとおり、これはイギリスのEU離脱=BREXITをテーマにした絵本です。

はたして、ガチョウとアヒルたちを待ちうける運命やいかに…。

ユーモラスで、諷刺がチクチクしている おとぎ話です。

 

そのむかし、私はイギリスのコメディ脚本を翻訳していましたが、時の政権や女王を揶揄した内容が多いことに驚きました。

日本ではとても考えられないと羨ましかったものです。

 

けれど私がこの絵本を翻訳するときめたのは、ジョンソン首相をからかいたいからではありません。

普遍的な問いかけをもつ物語だから。

幼稚園でも、学校でも、公園でも、マンションでも、会社でも、自治体でも。

舞台をどこに置き換えてもよさそうなお話。

 

そしてもちろん、日本は、まちがいなく「ちいさな しま」です。

「よそものたち」が私たちの島にやってきて、ともに働く現実は、すでに始まっています。

担当編集の鈴木真紀さんと、身近にあるさまざまな事例をあげて話し込んでしまいました。

 

さて。

わたしはガチョウなのか。アヒルなのか。

あなたは、いかがですか?

 

 

絵本と 不発弾ピアスと アフガニスタン

 

シャンティ国際ボランティア会のことを、わたしがはじめて知ったのは、たぶん、2004年のスマトラ沖地震のとき。

 

日本からもさまざまな団体が支援にかけつけ、阪神淡路大震災で培ったノウハウを応用してお手伝いをしていましたが、そのあと被災地にとどまって子どもたちに絵本を届ける「図書館活動」をした風変わりな団体として、ぼんやり印象にのこりました。

 

「シャンティ」なんて名前だから、若手僧侶の団体かもねと思いました。

じっさい、原点は曹洞宗の有志によるインドシナ難民救済活動だそうですが、40年近い歳月を経て、特定の宗教とはかかわりをもたない公益社団法人、国際協力NGOとして、めざましい活動実績をあげているようです。

特筆すべきは、絵本をとおして、アジアの子どもたちの教育支援を行っていること。

 

2011年の東日本大震災でも、いちはやく気仙沼事務所をたちあげ、「走れ東北! 移動図書館プロジェクト」とやらで図書館バスで走り回っているシャンティを、やはり気仙沼とご縁があって個人的に細々と支援をしていたわたしは、横目でちらちら見ていました。

 

そんなふうに、なんとなーく意識していたシャンティから、直接お声がかかったのが、去年のこと。

「せかいでいちばんつよい国」に山岳民族のカレン語とビルマ語のシールを貼って、難民キャンプに届ける企画がはじまったのです。

私は両手をあげて、はしゃいで参加。とても新鮮な体験でした。

 

 

そのご縁で「絵本を届ける運動」20周年記念に呼んでいただくことになり、シャンティの専門アドバイザーである鎌倉幸子さんと対談をしてきました。

 

イベント前半はシャンティの海外での活動報告です。

日本のボランティアたちが現地語のシールを貼った山のような絵本のコンテナが船に積まれ、トラックに積みかえられて道なき道をひた走り、泥にうまって難渋し、ようやく山奥の子どもたちの手に届くまでの写真の数々。

ポルポト政権によって学者も教師も図書館も本も抹殺されつくした祖国で教師になり、いま子どもたちに絵本を手渡している中年男性の穏やかな表情。

文字のよめない親に、絵本を音読してあげる子どもの誇らしげな顔。

カンボジア事務所で9年間をすごした鎌倉幸子さんが語る現地の子どもたちの本の読み方に感心したり、しんみりしたり。

私は完璧に聴衆になり、放心してしまいました…。ぼーっ。。。

まずい、言葉がでてこない…。。。

 

どうにか気を取り直して「せかいでいちばんつよい国」「メルリック まほうをなくしたまほうつかい」「いっしょにおいでよ」「ひみつのビクビク」についての話をしましたけど。

 

ちなみに、この日、わたしのピアスは、これ。

 

銀色の8面体を半分に切ったようなスタイリッシュな金属ピアス。

重そうにみえて、とても軽いので、お気に入り。

 

じつはこれ、もう何年も前に、シャンティの手工芸品の販売による支援活動クラフトエイドで買いました。

なんと、ラオスの地中に埋まっているベトナム戦争の不発弾を回収してピアスにしたもの。

 

ざんねんながら、いまは在庫がないそうです。(ほかにも素敵なのがありますよ)

私:「友だちにもプレゼントしたんですよ。もっと欲しいなあ。原料調達できませんか?」

鎌倉さん:「そうね、ビジネスにしようかしら」

…なんてキツいジョークのやりとり。

でもほんと。

不発弾も地雷も、みんなアクセサリーになってしまえばいいのに。

 

 

定員をはるかに上回るぎゅう詰めの会場は、熱気がすごくて師走だというのに冷房ON !

さいごは小グループにわかれて参加者どうしの話し合いも行われました。

新たなネットワークが結ばれているといいな。

 

ほそえさちよ編集者や、鈴木真紀編集者とも「世界の子どもたちの問題に関心をもって積極的に働いている人達があんなにいるんだねえ」と、興奮気味に話しました。

胸が ほかほか温まって帰宅。

うむ、世の中、捨てたもんじゃないぞ。

 

……

 

その直後に。

アフガニスタンで中村哲医師が殺害されたというニュースがとびこんできました。

 

現地の人達が自力で用水路を掘れるように、学び続けられるようにと、息長く、ひとの体温をつたえる本物の支援をつづけてこられた方なのに。

 

シャンティもまたアフガニスタンの子どもたちの教育支援をしています。

銃撃事件のあった場所のそばに事務所があるそうです。

 

絵本とか、子どもの笑顔とか。

かわいいもの、きれいなもの、夢や憧れ。

そういった、のんきで のほほんとしたもののために、わたしは日々腐心しています。

まったく、お気楽な稼業です。

なのにときどき、そんなことをしている場合か、それでもこの世界を信じられるのかと、刃を突きつけられるようなことが起きてしまいます。

のほほんをつづけていくことが、それだけで「闘い」になりうる。

そんな社会は、まっぴらなのに。

 

シャンティの若いスタッフは、中村哲さんの訃報をうけた夜に、「いっしょにおいでよ」を読み返したそうです。

 

日々の自由なくらしを手放さないこと。

よいもの、美しいものをたいせつにしていくこと。

それもテロへの意思表示だと、画家のパスカルは言っていました。

 

 

 

さいごに、シャンティからもらった冊子(2019年10月秋号)を。

 

支援地域にとどけた絵本の冊数が書いてあります。

その1冊1冊を、数十人、数百人の子どもたちが繰り返し繰り返し読むのだそうです。

 

 

アフガニスタンの水場につどう子どもたちの写真もありました。

子ども図書館に通う少女の、おだやかな日常のエピソードとともに。

 

 

 

 

紙の本は プチ・アート

 

「ハンカチともだち」の見本があがってきました。

ぼちぼち、全国の書店に並ぶとおもいます。

 

長い時間をかけて作ってきた本ができると、わたしは凹みます。

編集者には苦笑され、がっかりされる困った性癖です。

 

そんなわたしを救ってくれるのが、本の美しさ。

きれいな装丁の本だと、あまり凹まずにすむのです。

 

この「ハンカチともだち」も、そう。

布のような風合いの帯については、前にも自慢しました。

しかも、校正のときより一段と布っぽい。

山口郁子編集者が印刷立ち会い(←印刷機の横に長時間貼りついてニラミをきかすこと)でインクの盛りを調整してくれたおかげでしょう。

もちろん、印刷所の職人さんたちの熟練技があってこそ。

 

本を手にとると、帯の部分は、ざっくり木綿の肌ざわり。

いっぽう表紙カバーは、さらりとなめらかな絹のよう。

触感のちがいが新鮮です。

 

表紙をひらくと広がるのは、ほんわかピンクの見返し。

はい、ハンカチをイメージしています。

 

 

さらに見返しをひらくと、右側はただのピンク。

でもこれ、見返しと同色同濃度を指定して印刷しているんですよ。

さいしょは白い紙のままでしたが、なんとなく間が抜けていたため、デザイナー判断でこうなりました。正解です。

 

ピンクの面積を増やせば、めだってくるのが、ミントグリーン。

「ともだち」の言葉が、ぽんと浮きあがりました。

著者名も出版社名も、割愛。すんすんと、お話の世界に入っていってほしいので。

 

 

ピンクは、主人公 はるちゃんのテーマカラー。

だから、しばらくピンクが多い頁がつづきます。

 

そして9頁めに、副主人公のミヨンが さりげなく登場。

文章ではミヨンの名前をださず、ことさらに注意を促すこともしませんが、ミヨンの靴下はミントグリーンです。

 

ここをみて、わたしは、はっとしました。

予想していた以上に、ミヨンが印象的だったのです。

そう、紙面の左端にもミントグリーンがあるからですよね。

 

 

左端だけではありません。

本の表紙とカバーは、本文用紙より大きいため、天地にもこの色がのぞきます。

まるで額縁のように。

 

 

たまたまなのか、内なる必然ゆえか、副主人公ミヨンがでてくるのは左頁が多い。

そしてこの本の装丁は、左の表4(裏の表紙のこと)が きっぱりミントグリーン。

読む人のからだが揺れ、本が揺れ、目がうごくたびに、ミントグリーンの額縁が有効に作用するというしかけ。

 

う〜む。

才ある装丁家は直感的につかみとったのでしょうか。

本の内容をしっかりサポート&一段ひきあげていただきました。

 

 

こうして紙の本は、子どもが日常的に出会う ささやかな美術品になるのだとおもいます。

小さな「美」の ふだんづかい。

とても大切です。

 

 

ハンカチともだち 本日印刷!

 

制作過程をたびたびご紹介してきた「ハンカチともだち」。ようやく印刷です。

 

写真は、過日、デザイナーの鈴木千佳子さんの事務所での表紙回りの紙選び。

初校と再校、すなわち、何種類か試し刷りをしてもらったものをくらべて検討しました。

 

 

ピンク色の表紙をめくると、おなじピンクの「袖」のわきに「見返し」が並びます。

文章や、あまり意味のある絵はない部分ですが、ここはいわばプロローグ。

どのように幕をあけ、本の世界へと誘うかについて、装丁家はとても神経をつかいます。

おなじピンクであっても、どれくらいの濃度がよいのかと熟考する千佳子さん。

 

 

そしてこのとき、表紙カバーに巻く「帯」の用紙もきめました。

後日、刷り見本が送られてきたので、さっそく巻いてみると…、

おお、なんだか布っぽい!

(ちなみに下の葉っぱ模様は北欧柄テーブルクロス……じゃなくて、コヨセさん描く「おたすけこびと」のラフです)

 

 

このお話は、ふしぎなハンカチの物語。

遠目では違いがわかりませんが、手に取ると、たしかにざらっと布のようだし、ぼんやりと下の絵が透けるあたりがほんとにハンカチみたい。

うれしくなりました。

ちょっとお高い用紙だそうです…。

ありがとう、アリス館♡

 

 

…と、そんなふうに。

私は本に着せるお洋服選びにウキウキしてだけいたのかといえば、とんでもなくて…。

大量の修正箇所と闘っておりました。

 

ごらんください、カラフルな付箋たちを。

七夕の短冊ではなく、新たな修正が生じるたびに色をかえていたためです。

ピンク=絵の修正、緑=文章再考、紫=絵の修正2回目…などのように。

 

 

担当編集者の山口郁子さんだけでなく、編集部全員のチェックが入ります。

 

「○ページのツインテールの女の子のシャツにはフリルがありましたが、○ページで同じ女の子のシャツにフリルがありません」

「絵の具かばんの形状が ○ページと○ページで違います」

「ずぼんの裾からのぞく靴下の色、塗り忘れです」

「主人公の女の子がハンカチが入れているのは右のポケットのはずです」などなど…。

 

今回は、とくに鞄の形の修正頻発…。

「ちひろさんは 鞄に愛がないんですね」と山口さんに言われてしまいました。

作品が良くなる修正は楽しいけれど、自分のずさんさを思いしる修正は、楽しくない。(v_v)

子どもの頃、頁によって主人公の服や持ち物が違っているととてもがっかりしたものです。

それは避けなければ。

ありがとう、フォトショップ…泣。

 

 

今回は、校閲の方にもチェックをお願いしました。

ほら、人気の高かった (とくに業界内で) テレビ番組「校閲ガール」ですよ!

彼らはほんとうに地味にすごくて、しばしばお世話になっております。

 

かくして、付箋は本の上部ばかりか横にも底部にも増殖し、ウニの触手と化していったのであります。

 

 

それでもどうにか、ようやく、めでたく校了。

「校了」というのは、このさき、著者はなんにもできないよ〜! あきらめなさ〜い!という宣言であります。

 

そして本日、印刷の運びとなりました。

あとは印刷と製本の職人さんたちの腕を信じるばかり。

山口さんも、印刷所に立ち会いにでかけ、微妙なインクの出具合を調整してくれています。

 

多くの方に手を添え、心を傾けていただいてできあがる本ですが、読まれなければ、ただの紙ゴミ。

資源のむだにならず、読む方の心に届きますように…。

 

見本は二週間後にできあがるそうです。

 

 

 

これまでのお話を読んでくださる方は、こちらからどうぞ。

 

  http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=67

 

    http://chihiro-nn.jugem.jp/?month=201904

 

    http://chihiro-nn.jugem.jp/?month=201905

 

 ぁhttp://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=89

 

    http://chihiro-nn.jugem.jp/?eid=95

 

 

 

プリンハロウィンの Trick or Treat!

 

 

今年のプリンちゃんハロウィンは、大田区千鳥のTeal Green in Seed Villageにて。

 

準備をととのえ、からっぽの店内で子どもたちがやってくるのを待つ魔女ふたり…。

 

 

すると、くるわくるわ…。

黒猫、海賊、妖精、コウモリ、蜜蜂、かぼちゃ、おばけ、小悪魔、ウサギ、人魚のアリエル、エルサ、ジャスミンなどなど…。

 

 

 

まずは「プリンちゃんのハロウィン」を読みます。

はじめての子も、絵に仕掛けられた小さな謎をちゃんと読みとってくれました。

 

 

それから工作タイム。

 

 

プリンちゃんのきせかえシートから、気に入ったものを各自チョキチョキ。

 

 

 

 

 

いいなあ、この真剣な表情。

かなり定員オーバーだったためヒヤヒヤでしたが、ハサミは早いうちから使ったほうがよいというのが、たかおさんと私の考えです。

 

 

室内に入りきれなかったお姉さんたちは、中庭で黙々と作業。

キラキラペンも使って装飾的にしあげます。

 

 

切ったパーツを、黒い紙袋にぺたぺた貼りましょう。

 

 

ほら。いろんなプリンちゃんバッグができました。

 

 

このハロウィンバッグをもって、お店の外へ出ていくと…

(あら、エレガント♡ お姫さまドレスでの階段の降りかた、ちゃんとわかっていますね  (^o^)

 

 

外で待ちかまえているのは、コワモテの魔女2名。

ナマハゲではありません、ハロウィンのご近所巡り立哨当番であります。

旗のかわりにホウキを振って、子ども達の交通安全を守ってくれました。

 

 

かわいいエルフも協力してくれました。耳にご注目。

(このエルフは平澤朋子という人間名で絵本作家をしています)

 

 

あらかじめお願いをしていたご近所さんを回ります。

"Trick or Treat!  おかしくれなきゃ、いたずらするぞ〜!"

「あらまあ、いたずらしないでね」と、にこにこ顔でお菓子をくださいます。

さいごに大きな声で「いたずらしませーん!」とご挨拶をしたら

「みんな、いい大人になってね」と優しい声で言われましたっけ。

 

 

お店に戻って、サイン会。

私が たかおさんに無理難題をふっかけたのであります。

「せっかくだから、子どもたちの仮装どおりのプリンちゃんを描いてあげたら?」

たかおさんは「え〜、そんなのできるかなあ…」と困惑していましたが、

これ、このとおり!

 

 

「この紫がかっこいいから、ちゃんと描いてね」などのご注文にも…

 

 

「黒猫バッグも描いてください」のご要望にも、ホイホイ応じます。

 

 

提案した私も、これほど見事に仮装プリンちゃんが描けるとは思いませんでした。

たかおゆうこのサイン画力に、脱帽〜。

 

 

「Trick or Treat。おかしくれなきゃ、いたずらするぞ!」

このセリフを何回も言いつづけた子どもたち。

袋のなかにお菓子がたっぷりたまってくると「おかしは、いっぱいあるから、もういいや。いたずらしようかな。どんないたずら、しようかな」と目をくりくりっと動かして考えはじめていました。

 

あはは…。

みんな、適度にいい子でいてね〜。

(^o^;)

 

 

たのしい1日でした。

店主ご夫妻も、魔王と、モンブランばあばに仮装。

本の売上げも上々だったようです〜。(^o^)

 

 

 

新しいカメラで素敵な写真をたくさん撮ってくれたモネさん、ありがとう☆

 

 

とことんプリン展示

 

 

22日からはじまる白岡のプリンちゃん原画展示の準備をしてきました。

 

展示から関わることはあまりないのですが、今回は資料展示が多いので、たかおゆうこさんとともに企画から参加をしています。

 

この際、子どもたちの絵心も刺激したいというのが、わたしたちと主催者の密かな願い。

そこで、こんなに汚い(?)パレットも、わざわざ展示しています。

 

でもこれ、汚いどころか、宝のパレットなんですよ。

右の丸いパレットは、プリンちゃんのからだを描く絵の具を並べたパレットなんですって。

中央にはいろんな黄色が並んでいます。ほほお、青も使うんですね。

 

そして左の丸いパレットは、プリンちゃんの頭のカラメル部分専用のパレット。

ピンクの絵の具も見えますね。

上の大きな四角いパレットは、プリンちゃん絵本の背景用のパレットだそうですよ。

 

つまり、たかおさんは、じぶんの描く絵本ごとにいくつものパレットを用意し、それを大切に保管しているということ!

 

子どもたちは、学校の授業でパレットを綺麗に洗うようにと習いますよね。

たしかに、しつけとしては正しいのだけど、プロの絵描きはそんなもったいないことはしないのでありま〜す。(^。^)

 

ふうーん…。

と、小さな小さな小骨がのどをひっかいたくらいの違和感をおぼえておいてほしい。

なぜなら、絵を描くことは、ひとり旅に似ているものだから。

いつ、どこへでかけて、なにをみつけて、どう描くかも、すべてじぶんで決める。

だから、そのための旅の道具も、じぶんで決める。

いつかそのことに気づいてくれる子どもは、きっといるだろうと信じています。

ささやかなことですけどね。

 

「へぇぇぇ、そうなんですか…」と、ぐちゃぐちゃパレットをしみじみ感心して見入っているのは、今回の責任者の安藤さん。

わたしたちが投げる わがままツブテの山をガシッとうけとめて、ご尽力くださっています。

 

 

壁面に並ぶのは、シリーズ1冊め「プリンちゃん」の原画全点。

すべてキャプション(文章)つき。

これをよみながら会場をまわれば一冊まるごと味わえるという寸法です。

 

 

このほか、たかおさん手作りのお菓子の家や、二人で集めたガラスの器、食べ歩いたスイーツ写真や、そもそもの始まりである、わたしの「シナリオ」や小さなラフも展示しました。

見どころは、たかおさんのツッコミメモや落書き。(^_^;)

 

 

何点かはコピーをつくってもらって、手に取ってめくってもらえるようにするつもりです。

(かくして安藤さんの夜なべ仕事が増えていく…)

 

そしてもちろん、しらおかいちごくらぶの布絵本も展示してあります。

(写真は、仮に並べてみたものです。本番ではもっとかっこよく展示しますからね)

 

 

布絵本がガラスケースの中に入ってしまい、来館した子どもたちにさわってもらえないことを悲しむ いちごくらぶの皆さんは、なんと「さわって遊べる 布きせかえプリンちゃん」を作ってくれました。

 

この展示のために、わざわざ!

3セット、あります!

みんな、遊びにきてね〜。

 

 

原画展示は22日から。

27日には作家トークも行います。

 

午前の部の子どもたち対象ワークショップは準備の都合上、定員を増やしづらいのですが、午後の部は会場を拡張することも可能です。どうぞお出かけください。

 

詳しい情報とお申し込みは、こちらから↓

http://www.city.shiraoka.lg.jp/12810.htm

 

おたすけ会議 7

 

 

9月の定例おたすけこびと会議。

 

都心駅前一等地のハイテクオフィスビルに現れたコヨセさんは、

打ち合わせ机の上に、どん! 

ホームセンターなどで売っているツールボックスを置きます。

 

 

その中には、新聞の古紙回収袋。

その中身は、なんと…

 

 

おたすけこびとのラフと原画であります! (>_<)ゞ

 

 

以前は、クリーニング屋さんのエコバッグを肩から提げて通ってきていましたっけ。

このツールボックスに変えたときは得意そうだったなあ。

 

原画を傷めないようにふんわり丸めて格納できるし、雨がふっても平気、混雑した電車内でも つぶされる心配は皆無。

たしかに重機絵本の画家にふさわしいのかもね、ツールボックス…。

 

それにしたって「古紙回収袋」は、ちと ひどいよねえ…。苦笑。

「くれぐれも駅や電車に置き忘れないでくださいね」とヒヤヒヤの編集部でありました。

 

 

さて。

「本絵」の画業が、すこしずつ進んでいます。

 

まずは、ペン入れ。

細かな線が、こんなにびっしりと…。

まだ色が塗られていない原画は、精密な設計図のようにもみえます。

 

 

「このヘリコプターはね、ロビンソンR-22 なんだよ」と、うれしそうに話すコヨセさん。

「…ふうん…」と、反応の薄い わたしたち…。

 

 

↓ ほおほお、これね。(いま調べました。メーカーサイト写真です)

 ヘリコプターに関心のある人なら、必ずしっているであろう機種なのだとか。

 トンボみたいで、かっこいいですね。

 

 

ヘリコプターだけでなく、おたすけこびとは重機各種を駆使して活躍します。

でも、じつはとても小さな世界の物語です。

そのことを読者にわかってもらうために、大きさの指標となるべき物体を画面のところどころに配置しています。

葉っぱや小石や、カエルや 昆虫など。

葉っぱはいろんな大きさのものがあるので、指標としては物足りないときもあり、ここではトンボがその役割を担っています。

 

 

「でも、トンボのほかにも、もうひとつ、ほしいですね。たとえば、テントウムシとか…」

と、若手編集者TKが呟きました。

 

そのとたん、

「なるほど。テントウムシは可愛いかも!」

「テントウムシにも色や大きさがいろいろあるよね」

「赤に黒? 黒に赤?  黄色もいるよ。畑の敵はニジュウヤホシテントウ」

四人が口々にしゃべりだし、アイディアの球をぽんぽん打ち合うさまは、あたかも卓球ダブルスのラリーのごとし。

その結果、かわいい案が採択されました。

 

 

ほらほら、この子。

いちばん有名な ナナホシテントウ。

体長は ざっと 8ミリ前後。

 

 

いっぽう、おたすけこびとの身長は 25ミリ。(←ちゃんと決まっているのです)

でね、ヘルメットの直径が、約8ミリなんですよ〜。

 

だからね。

じぶんのヘルメットの上にテントウムシをのっけて「ダブルヘルメット」にして喜んでいるこびとがいたら楽しいなあ…って。

満場一致の拍手で、コヨセさんにお願いいたしました。

 

 

本のストーリー展開とはまったく関係のないお遊びですが、わたしたちは、繰り返し本を読む子どもたちが「10回目に気がついてくれれば」と思う事柄をいくつも仕込んでいます。

それはもちろん、わたしたちの楽しみでもありますし。

 

本ができあがった暁には、ダブルヘルメットのこびとを見つけてくださいね。

(^o^)