活版印刷

 

活版印刷を体験してきました。

 

アルファベットだけで名刺をつくります。

小さな鉛の棒を、ひと文字ひと文字、指先やピンセットで棚からぬきとって、並べて原稿をつくるのです。

 

 

名前用の18ポイント活字はまだよいものの、アドレスにつかった8ポイントの「i 」とか「:」なんてもう爪楊枝を裂いたみたいに細かい…。

今回はアルファベットだけでしたが、平仮名・片仮名・漢字・数字の組み合わせになるとどんなことになっちゃうのやら。

活字と活字のあいだのスペースにも、込め物を入れます。

左右のバランスや行間を考えて、しかも作業中にすべって落ちてこないように隙間なく埋め込まなくてはなりません。

天地をまちがえたり、せっかく並べた活字を倒してしまったりと、あたふたしながら、ようやく3行分の活字を「植字」して作った組み版が、トップの画像です。

達成感とともに記念撮影〜!

 

ところが印刷してみたら、ありゃま、Nakaのひとつめの「a」が上下さかさまでした。。 

おお、これが「誤植」というものなのね!と、とりあえず感激。はい、やりなおし〜。泣

 

本の場合、数行ずつ拾って植字したのちに、1頁ぶんをこのように紐で束ねるのだそうです。

本一冊が数百頁あるとして、いったいどれほどの重量になるのでしょう。

 

昭和の香りただよう印刷機にセットして、ガチャンガチャンと一枚ずつ手押しで印刷。

(案外、腹筋つかいました)

 

 

うむ。この、きりりとした物質感は、たしかに美しい…。ほれぼれ。

 

 

 

…あ。

もちろん、次の新刊が活版印刷ででるわけでは、ありません!

ただの好奇心なのですが、本を出版してもらっている身として、なんとなく心の文鎮のようなものを求めていたような気もします。

 

PCでペチペチ言葉を打って、おうちプリンターでシャアシャア印字して、その紙をポイポイ捨てているのが、わたしの日常です。

でも本来、会ったこともない人びとに届ける文字、わたしの命が絶えてから読んでもらうかもしれない言葉というものは、これだけの重量と労力を必要とするものだったのだということを、ちょっとだけ、じぶんに思いしらせておくために。

 

 

去年、読売新聞で原田勝さんと交替で連載していた本の紹介「空色ブックガイド」でも、活版印刷にまつわる本をとりあげています。

(活字の街をさまよう少女のイラストは丹地陽子さん。掲載許可を伺っていないので半端な見せ方です、ごめんなさい ! )

 

 

 

 

絵本の息づかい

 

『ノロウェイの黒牛』 最終的な編集作業が佳境です。

 

さとうゆうすけさんの絵は とっくに完成し、印刷所でのスキャンも終わっているのですが、なにやかやと小さな描き足しや修正のお願いが入ります。

さとうさんは出張先にも絵筆をもって出かけられたとか…。

 

装丁家の中嶋香織さんが絵と文字の仮レイアウトを行い、編集の鈴木加奈子さんが実寸で印刷してくれたものが届きました。

その紙を貼り合わせて、本を読むように めくっていくと……。

あらまあ、直すべき文章が悲しいくらいビッシバッシと見えてきちゃうんですよー。

(いや、けっこう嬉しいんだ、じつは)

 

なんで今さらと思われるかもしれませんが、絵がじゅうぶんに語っている内容については、文章が不要になるからです。

絵の邪魔になる文章は、すみっこに寄せたり、折りたたんだり、かたづけちゃったり。

また逆に、ところどころ、ツンツンつまんで目立たせたりもします。

すべては、頁をめくったとたん広がる絵に、ドキンとしてもらえるように。

 

めざすは、パスタとパスタソースの絡まり具合の妙。

この場合、パスタが文章で、ソースは絵ですよ〜。

だって、なにを食べようかとおもうとき、ソースで選びますもんね。

まあ、どっちにせよ、口にいれた瞬間には、なにも考えずにパスタのもっちりとした噛みごこちとソースの豊かな旨味をうっとり味わってほしい。

つまり読者が、よけいなところにひっかからずに、お話の世界に入っていけますようにと願うわけです。

 

はじまりから終わりへと向かうリズムも、とても大切。

たとえば映画で、冒頭からずっと大音量と迫力画面でボンボンやられたら嫌気がさしてしまうはず。静かな音楽や、ゆったりとした展開などのメリハリがきいてこそ、見せ場がいきてくるものです。

絵本もそう。

 

剪定バサミをチョチョキいれつつ、上から下から 矯めつ眇めつしているうちに、絵と文と、紙とインクと糊と…ほうぼうから差し伸べられたいくつもの手があわさって、絵本がゆっくりと呼吸をはじめます。

生きもののように。

 

絵本づくりの醍醐味です。

 

(それにしても、さとうさんの描く赤い魔女、こわいよ〜ん (>_<)

 

「こわい」は ともだち?

 

"ME and my FEAR" という絵本を翻訳中です。

 

9月に出版されたばかりの『ジャーニー 国境をこえて』(きじとら出版  青山真知子訳)の作者フランチェスカ・サンナによる2作目です。

まず 1作目の『ジャーニー 国境をこえて』がどんな本だったかというと…。

 

抑制のきいた色と線が美しく、どこか懐かしい人形劇のような趣もありますが、戦争で大黒柱を失った母と子が難民となって逃げる苛酷な現実を描いた絵本です。

具体的な地名や時代は、かいてありません。

どこにでも起こりうることだから。

 

旅立ちの前、母は「安心してくらせるところ」をめざして「すごい冒険」をしようと子どもたちを励まします。

冒険の定石どおり、おそろしいこと、つらいことがたくさんあり、旅が進むにつれて母子は「いろんなものを うしろにのこして」いきました。命ひとつだけを抱えて。

そしてようやく新しい土地にたどりつき、読者の心にも希望がともったところで、このすぐれた絵本は閉じられます。

 

 

 

…けれども。

物語にはいつだって、つづきがあるものです。

母と子は、新しい土地で幸せに暮らせたのでしょうか。

「安心してくらせるところ」には戦争がないとしても、言葉がちがいます。

異国のたべものや風習になじむまで、しばらくかかることでしょう。

仕事はみつかったでしょうか。

子どもたちは、学校でいじめられないでしょうか。

 

2作目の "ME and my FEAR" は、そんな「つづきの物語」なのかもしれません。

けれども、この本の魅力は、難民問題を抜きにしても、うなずける内容だということです。

 

主人公の女の子には、ひみつの友だちがいました。

ほかの人にはみえない小さなふしぎな存在で、白くてほわんとしたオバケちゃんみたい。

この友だちの名前は FEAR = 恐怖心。

つまり女の子は、こわがりだったのです。

 

日々、わたしたちは、いろんな物事をこわがったり、警戒したりしてくらしています。

だけどちょっと恥ずかしいから、自分が FEARを抱えていることはなるべく隠します。

でも悪いことばかりじゃないんですよね。

FEARのおかげで注意深くなるので危険な目にあわずに済むし、対処法も学んで少しずつ強くなっていくのです。

 

ね。

だれもが、ふむふむと思える設定でしょ。

フランチェスカ・サンナ、うま〜い!

 

さてと。

翻訳者としての私の課題は、副主人公の FEARちゃんに 日本名をつけてあげること。

そしてつぎに、読者である日本の子どもたちの日常と、この本がじつは強烈に意識している難民問題とをどれくらい重ねるかという匙加減です。

うーむぅ…。

 

 

鯛茶漬け

 

『いつか あなたが おおきくなったら』の初稿がでました。

編集の平沢拓さんとともに、南青山にある水崎真奈美さんのデザイン事務所に集合。

 

装丁にまで口を挟むホンヤク者として悪名高いワタクシですが、デザイナーの事務所にまでお邪魔することは、あまりありません。

でもね、水崎さんの事務所のそばのお店の鯛茶漬けランチがね、美味しいのよ…(^.^)

 

 

まずは、色の確認と、紙の相談。

今回でた初校の色は、原書の色とやや違っていました。

でもどうやら、初校のほうが、画家が描いた原画の色に近い。

原画を見たわけではありませんが、ある程度推測することができるのです。

判型を小ぶりにしたのも可愛いし、すっきり綺麗でノスタルジック。

いいぞ、ジャパンクオリティ。

 

日本語版でつかう紙も、原書より、はるかに素敵です。

とくに今回、水崎さんが遊んだのは、見返し紙。

さまざまな人種の赤ちゃんがならぶ見返しの紙は、お菓子のラッピングをイメージした包装紙なんですって!

本ができたら、スリスリさわってみてください。

どことな〜く甘やかな気分がしたら、クッキーの缶をあけたときに上に敷いてある紙と連想がつながったからですよ。ふふふ。

 

さて。

この日の大きな課題は、最終頁の文章と絵のバランスでした。

原書には I will  love you. という文章があります。

もちろん大切な言葉なのだけれど、日本語人は日常的に「愛してる」とは言いませんよね。

恋人ならいざしらず、親から静かな声で真剣に言われたらドン引きでしょう。

英語でくらす人びとが口にするニュアンスに限りなく近い表現をさがすのが、絵本翻訳者の仕事です。

 

で、わたしなりの解決をだしたわけですが、原文より長めになってしまいました。

原書のテキストとほぼ同じ分量で訳文を当てはめることも、絵本翻訳には大切な任務です。

絵本は、絵と文のリズムで進んでいくものですから、わたしのせいでテキストが長くなり、そのバランスが崩れるなんて、ゆるせない。

すごーくキモチワルイ。

 

でも、やっぱりテキストを短くするわけにはいかないよね…だって、この絵本の意味はカクカクシカジカだもんねえ…などと、編集の平沢氏とブツブツ確認しあっているのを横で聞いていた水さん。

じゃあ、こういうレイアウトはどうですかと、PCで変更を加え、プリントアウトしたものを切って嵌めて見せてくれました。

おお〜!

微妙な調整なのに、すとんと、きれいに着地してる!

 

クライアントの意向はもちろん、迷いも把握したほうが、デザインの方向性が見えてくるのだそうです。

 

最近は、離れた場所からの画像とメールのやりとりだけで、すべてが済んでしまいます。

ほんと便利。

でもやはり、顔をあわせてあれこれ話しながら打ち合わせをすると、よけいな忖度部分が不要となり、思いがけない名案がころがりでてくるものだなあ。

だいいち、たのしい。

 

…というわけで、1時間半みっちり打ち合わせをしたあとは、三人でホクホクと鯛茶漬けをたべにいきました。(^o^)

 

 

黒牛の王子は黒髪か

 

スコットランドのむかしばなし絵本『ノロウェイの黒牛』。

魔女の呪いで黒牛にかえられた王子と、土地のむすめのふしぎな恋物語です。

 

 

さとうゆうすけさんが絵を描けるのは土日だけ。

毛の一本一本を描くような絵で丁寧に物語世界を紡ぐ作業は、どれほど大変だったことか。

わたしは遠くで見守るだけでしたが、新たな絵ができるたびに編集の鈴木加奈子さんが文章を組み込んだ画像をこまめに送ってくれたので、ずっと伴走しているような気持ちでした。

 

さて、ようやく、ほとんどの絵がそろいました。

そして装丁家の中嶋香織さんから、表紙のラフが送られてきたのです。

タイトルのこの文字。この色、この形。いいでしょー。

 

登山でいえば、胸突き八丁をすぎて、頂上の景色が ぱあっと開ける瞬間のよう。

さとうさん、ほんとうによくがんばってくださいました。

(ああ、でもまだなんやかんやと細かい作業がありますから倒れないでくださいね…)

 

 

それにしても、昔話を絵本にするのは、なんと難しいことか。

とりわけ、あまり知られていない昔話の場合、原生林の開拓者気分です。

 

昔話の多くは荒唐無稽ですから、絵が図解になってしまうと、とたんに噓っぽくなります。

挿絵なら見せ場だけで乗り切ることもできますが、絵本は、よりくわしく設定を定め、流れに沿って矛盾がないように背景や小道具をそれなりに描きこまなければ成立しません。

その辻褄あわせに気をとられると、物語の勢いが削がれてしまうのです。

やっぱり昔話は、口で語り、耳できいて、むくむくと想像するのがいちばんなのかなと弱気になることもありました。

 

それでも、新たな気づきがうまれることもあります。

 

たとえば、黒牛。

さとうさんがモデルにしたのは、スコットランドの牛、ハイランドキャトルだそうです。

 

これね…↓

 

魔女に呪いをかけられてこんな姿をしていますが、じつは、美しい王子だったのです。

さて、ここで問題です。

どのように美しい王子なのでしょう。

耳できくか、文章だけを読む物語なら、各自が理想の王子を思いうかべればよいのですが、絵本の作り手としては、服装だの年齢だの髪の色だの、いろいろ決めなくてはなりません。

 

こんなに まっ黒な牛なんだもの。

とうぜん、髪も黒くて、瞳も黒い王子だろうと私は思いました。

黒い夜の王子、なんだか神秘的じゃありませんか。

 

ところが、さとうさんが描いた王子の髪は、なんとブロンド!

黒い毛皮のなかから黄金色の少年が現れたら綺麗だろうから…という画家の発想でした。

(目は、牛のときも王子のときも青い瞳)

 

う、うーん、そりゃあ 綺麗だけど…。

王子=金髪碧眼ってステロタイプでは?

白人優位っぽいのは、イマドキどうよ…。

はじめて絵をみせてもらったとき、わたしは首をひねりました。

 

でも結局は、さとうさんの閃きに大きく頷くことになったのです。

画家の直感、おそるべし。

 

それというのも、「ノロウェイ」がノルウェイの古語であるという説をみつけたからです。

これはスコットランドの昔話ですが、スコットランドと北欧は冷たい海を隔ててさほど遠くはなく、金髪碧眼の北欧人が大挙して進出してきた歴史があります。

もしかすると、呪いをかけられた黒牛とは、北欧からやってきて囚われた、あるいは漂泊の王子ではあるまいか。

 

はっ。

てことはつまり、土地に古くからすんでいた娘と、侵略者として憎まれていた異文化の王子の恋物語…!?

 

だからこそ、お話の冒頭で、むすめが「わたしはノロウェイの黒牛と結婚してもいいわ」と軽口をたたくと、ねえさんたちは ぎょっとして、とんでもないと強くたしなめたのかも?

言葉がつうじず、身の毛もよだつ怪物とされていた黒牛を、むすめが理解し、やがて愛するようになったのちも、鉄の靴をはいてガラスの山をこえ、数々の試練とふしぎをのりこえなければ二人が結ばれなかったのは、それゆえだったのかも。

 

あ…。

かなり現代的な国際結婚説に引っぱってしまいましたね。

登場人物たちの髪や瞳、肌の色、服装などを描く必要のある絵本だからこそ導かれた考えではありますが。

もちろん、真偽のほどはわかりません。

昔話は懐が深く、さまざまな妄想の楽しみをうけとめてくれるということでしょう。

 

さとうさんの直感による、絵本ならではの解釈に驚いたところは、ほかにもありました。

またお話しするかもしれませんけど、しないかもしれません。

来春、本ができたら、じっくり頁をめくってさがしてみてください。(^o^)

 

 

きょうりゅう強化計画

 

ドス ドス ドス ドス…。

地響きをたてて、きょうりゅうたちが押し寄せてきました。

 

15年前に出版された『きょうりゅうたちの おやすみなさい』の13刷り見本がとどいたと思ったら、昨年だしたシリーズ5冊目の『きょうりゅうたちの クリスマス』の2刷りが決定。

そこへさらに、きょうりゅう担当2代目編集者の西塔香絵さんから、あらたに原書が3冊送られてきたのです。

(ちなみに、初代きょうりゅう担当は、現在、徳間書店編集長の小島範子さん。…いま、おおかみ担当ね)

 

このロングセラーシリーズの主人公は、やんちゃな「きょうりゅうたち」。

こんな姿をしていますが、じつは人間の子どもたちです。

 

みなさま。

寝る前にぐずり、泣き、あばれる幼児が、とてつもなく手に負えない存在にみえたことはありませんか? (ワタシ、アリマス)

 

病院につれていこうとして渾身の力で抵抗されたり、せっかく作った料理をぶちまけられたり、レストランで走り回られたり、おともだちどうしのケンカの激しさに頭をかかえてしまったり…。

 

大人にとってトホホな わからんちん達は、おそろしいほどにパワフル!

かないっこありませんわよね…。

そんなため息を共有する著者たちが、わが子を親よりはるかに巨大な「きょうりゅう」として描いたのが、この翻訳絵本「きょうりゅうたち」シリーズです。

 

絵がリアルで、珍しい恐竜がつぎつぎに登場するのも魅力。

恐竜の名前を絵のなかに隠してあるので、みつける楽しさもあります。

 

でもこれ、まがうことなき「しつけ絵本」です。

前半で、きょうりゅうたちは、子どものアルアル的悪事をおもうぞんぶんやらかします。

その はっちゃけ感ときたら、そこまでやるぅ〜!?…と呟いてしまうほど。

しかし突然「いいえ、きょうりゅうだもの。そんなことはしません」と、きっぱり否定。

後半は「ちゃんと ○○を します」とゴリゴリ教育的誘導に転じるのであります。

いやはや、まったく理屈にあわない展開ではございますが、なぜか説得力があるんですよ。

最初におもいっきり解放して、笑わせてくれるからでしょうね。

 

さいごは「うちの かわいい きょうりゅうちゃん!」と結ばれるので、親も子もニヤニヤうふふのハッピーエンド気分になります。

 

 

シリーズの売れ行きが好調なので、新作を翻訳してもよいと、おゆるしがでたようです。  

わあ〜い、どれを選ぼうかしらん…。(^o^)

 

“How Do Dinosaurs Choose Their PETS?” は、きょうりゅう(=子どもたち)がペットを飼いたくなったという設定。ひょぉ、動物園からトラを略奪してきちゃうんかい…。

 

“How Do Dinosaurs Stay SAFE?” は、きょうりゅう(=子どもたち)が日常で遭遇するヒヤリ・ハットな瞬間とその対策について。笑えて印象にのこる安全教本。必要かもね。

 

“How Do Dinosaurs Learn to READ?” は、きょうりゅう(=子どもたち)が本や文字に親しむまでがテーマ。巻末のABCを平仮名に置き換えることに翻訳者は挑戦したいぞ。

 

それぞれ魅力があるので結論がでないまま、きょうりゅう担当の香絵さんに電話をしたら、あっけらかんと言われました。

「あ〜、それ3冊とも刊行したいんですけど、いいですかぁ?」

 

あっらまあ、いいですよぉ〜! 小峰書店、なんたる太っ腹! 

でもまだ契約が済んでないんですって。

この記事を読んでガバと立ちあがり、大金をつんで版権を横取りするライバル出版社が現れれば話は流れちゃうかも。

 

事が穏便にすすめば、来年はさらに、きょうりゅうシリーズが強化されていくはずです。

ドス ドス ドス ドス ドス ドス …。

 

 

 

北広島市図書館の読書まつり & 点訳絵本

 

北海道・北広島市図書館の読書まつりに呼んでいただきました。

 

なんと今年で39回目となる 子どもの本のお祭りだそうです。

140人のボランティアさんが何か月もかけて準備をするという、力のこもった催し。

 

なかでも特筆すべきは、「子どもスタッフ」の活躍でした。

今年は9人の小学生が夏休み明けから準備をしてくれたそうで、図書館につくと、カラフルなおたすけこびとたちが迎えてくれました。

 

  

 

館内、ひろいっ。

さすが北海道…。

そして子どもの本スペースには『きょうりゅうのたまご』の地下トンネルが!

 

もちろん、さっそくトンネルに入りましたよ。

懐中電灯の明かりをつけて入っていくと、恐竜の骨が光るんです。

絵本にでてくる宝箱があって、なかには黄金の冠と、剣が〜!

 

 

そして、出口付近で、きょうりゅうの卵と あかちゃんきょうりゅうに出会います。

近くにいた子どもたちは、もう何回も出たり入ったりしたそうです。

そりゃあ、入りたくなるわ。わたしは一回でがまんしたけど。(^o^)

 

 

午前中は一般の方にむけて子どもの本のお話を、午後には子どもたちと「あそび場絵本」と題して『プリンちゃん』と『おたすけこびと』のワークショップを行ってきました。

 

今回はじめて、おたすけこびと指輪を有効利用しました。

(いやなに、「おたすけこびとのにちようび」の帯についている絵を点線で切っただけです。

いやじつは、切ったり貼ったりは司書の太田小華さんや、ボランティアさんたちが夜なべでやってくれました…(^_^;)

 

 

館内のあちこちに飾られた装飾や、本への興味を促す掲示物やゲームなども、ボランティアさんたちの手作りです。

そのレベルが高くてびっくり!

ボランティアさんたちとの交流会や、子どもスタッフたちとの交流会など、盛りだくさんで楽しく、そして北海道の美味堪能の旅でした。

新谷館長、お招きをありがとうございました。

 

では、自慢のお土産を披露いたしましょう。

 

『天使のかいかた』の消しゴムハンコ!

館内での読書ゲームにつかわれていたものです。

細い線で、作者が納得できる主人公の表情を再現するのってむずかしいんですよ。

江戸浮世絵の彫り師並だ…と口をあけて感心していたら、プレゼントしてもらえました。

えへっ、うれしい…。愛用します。

 

 

そして、「プリンちゃん」の点訳絵本!

点訳ボランティアさんたちの部室や設備も見学してきました。

点字を そっと指でなぞって、その繊細な世界におどろいています。

絵の部分にもシートが貼られていることに、またびっくり。

百聞は一見…ではなく、一触にしかず。

 

 

そうそう。

点訳絵本といえば…。

いっしょにおいでよ』の編集者 ほそえさちよさんや、スペイン語の子どもの本の翻訳者 宇野和美さんたちが力をあわせて、メキシコ生まれの点訳絵本を日本で出版しようとしていることをご存じですか?

 

 

タイトルは『色についての黒い絵本(仮題)』。

まっ黒な紙に透明インクの凸凹で絵が描かれていて、なんとテーマが「色」なのです。

目のみえない男の子が色をどう感じているかを表現した絵本だそう。

たとえば青という色は、晴れた空をみあげて、お日さまが頬にあたる温かさなんですって…。

 

メキシコで生まれたこの本は、すでに15か国語に訳されていますが、日本ではまだ。

制作費がとても高いからです。

そこで、クラウドファンディング!

 

目標額は350万円。

現在の支援総額は196万円で56%。タイムリミットまであと二週間…。むむむ。

 

千円から参加できるので、みなさんも、ぜひ !

「色」を五感で思う素敵な絵本を日本語にしましょうよ。

 

クラウドファンディングのページへは、こちらから↓

https://greenfunding.jp/thousandsofbooks/projects/2416

 

 

 

おかえり、 おおかみ!

 

「おおかみの おなかの なかで」

5月に訳文とデザインのデータをイギリスの出版社に送ったものが、本のかたちになって、日本に戻ってきました。

コープロといって、数ヶ国語ぶんをまとめてコストの安い地球のどこかで共同印刷&製本するグローバルシステムなのです。

 

おおかみよ、おまえは どこで本にしてもらったんだい?

へえ、中国大陸かあ…。

地球をぐるりとまわって、おかえりぃ…ってかんじ。

 

でも、中身の本だけの裸んぼなので、ジャケットを着せてやらねばなりません。

英語のジャケットは、表紙カバーのこと。

資源の無駄という考えもありますが、流通や店頭で表面が傷んでしまった場合も、新品のジャケットに着がえて再出発できるのでエコだという話も…。

 

というわけで、ただいま、日本製のジャケットと帯をオーダー中でございます。

クチュリエの森枝雄司さんが仮縫いをしてみせてくれたジャケットに、小島範子編集者も、わたしも文句なし。

 

でも、帯で迷ってしまいました。

はじめにすすめられた三本の帯はどれも素敵で、じゅうぶん合格点。

さんざん目移りしたあげく、表紙絵を色硝子ごしに透かしたような帯にきめました。

晩秋の森で、雨にぬれた紅葉をみつけたよう。

文字を読みやすくするために、さりげなくグラデーションがかけてあるのもニクい。

 

いいものを見せてもらうと、欲がでてしまうものですよね。

あれこれ贅沢をいったら、森枝さんはすぐに改良案を作ってくれました。

 

どこがどう違うか、わかりますか?

色はもちろん、文字の書体や大きさ、並べかたなどが ちょっとずつ違うのですよ。

まるで百貨店のベルト売り場みたいでしょう。

「どれもベルトじゃ〜ん」と言うなかれ。

しばらくみていると、目が肥えてきて銘品がわかるものでございます。

そして銘品はやはり、お召しになる方(この場合、本、ね)の魅力をさりげなく、そしてキラリと引き立ててくれるものなのでございます。

なにせ、帯のミッションは、出会いがしらの一瞬に目をとめてもらえるか、さらには、手をのばそうと思っていただけるかの真剣勝負。

 

 

たかが本の帯。

されど、本の帯。

本を買っておうちについたら、ぺろんとはがして捨ててしまう物でしょうが、舞台裏では、こんなに一生懸命です。

 

 

ちょっと早めのプリンハロウィン 

 

わたしの机の上。

ときどき、じぶんの仕事が よくわからなくなります。(そもそも仕事という意識がないのだ)

が…、たのしい…。

 

できたよ〜♪と、自撮りパチリ。

 

   

 

衣装もカボチャプリン色にして…

 

 

 

めざしたのは、魔女おばけに仮装した プリンちゃん。

 

 

 

でもね。

通常業務を放擲して工作にいそしんでいたのは、わたしだけではありません。

その同じころ、たかおさんも、チクチク…。

 

 

 

たかおさんが めざしたのは、ラブリープリンちゃん。

 

 

 

 

さて。

こうして迎えた神保町ブックハウスカフェでのプリンハロウィンイベントの当日。

台風一過で お日さまギラギラ、ハロウィンの冷気にはほど遠く、気温は31度。。

 

そこに汗をふきふき、版元社長氏 (社名は秘す)が突然あらわれる。

あらかじめわかっていれば、フランケンシュタインの衣装をご用意いたしましたのに…。

「えっ、ボクも仮装するの!?」と一応は驚きながらも、ためらうことなく、まわりから勧められたかたちで カボチャ大魔王に変身。

通行人の注目を浴びつつ、お店の正面に設営中のお菓子ポイントで、そわそわと子どもたちを待つ…。

 

 

編集者Yも、草間弥生を意識して購入したという紫タマネギみたいなかつら持参で登場し、お菓子をわたすリハーサル。

たかおさんはスカートも靴下も、かぼちゃオレンジ色。

このあと、フェルトで作った大きなクッキーと飴ちゃんのブローチも装着。

(どうしてもラブリー路線に変身したいらしい。なんたって素が、まんま魔女だからね…)

 

 

営業ガールの河野真美さんも、猫耳としっぽをつけ、ほっぺに猫ヒゲをかいて、店内最奥のお菓子スポットで待機。

部屋をまっくらにし、スマホの灯りで顔を下から照らしていたから、かなりコワイ…。

 

 

そして、子どもたちがやってきました!

なんと、オレンジ色のハロウィンドレスと とんがり帽子できてくれた子もいましたよ。

うれしくなっちゃう♪

みんなで じっくりと絵本を読んだら、さあ、チョキチョキ、ぺたぺた、工作開始!

 

 

まずは、頭にかぶるプリンちゃんを変身させます。

おばけプリン、かぼちゃプリン、ねこプリン、海賊プリン、天使プリンもいるよ〜。

 

 

こんなプリンちゃんも発見。ふふふ。

 

 

あたまプリンちゃんができたら、

つづいて、黒いポリ袋(45L)に、もっと ぺたぺた…

 

 

黒い袋についている ヒモを きゅーっとひっぱると…

(あらかじめ、営業ガール河野が袋のはしを折り返して両面テープでとめ、紐をとおしておきました。おうちでやっても簡単ですよ)

 

 

あっというまに、ハロウィンマントの できあがり!

 

 

いっひっひ。たのしいよねえ…(^o^)

 

変身したみんなで 行列ぞろぞろ…

 「Trick or treat !   おかしくれなきゃ、いたずらするぞ!」

プリンちゃんの歌もうたいながら、お店のあちこちに設置したポイントをまわり、お菓子をもらいました。

(カボチャ大魔王は「おかしあげないで、いたずらしてもらおうかな〜」などと想定外の発言をして、子どもたちを困らせておりましたが…)

 

 

サイン会も終わり、子どもたちが帰ってから、プリンチームで記念撮影をしました。

わたしたちが隠しちゃっていますが、このコーナーには原画が二枚飾ってあります。

サイン本もすこし余分に作ってきましたので、まだ何冊かあると思います。

プリンちゃんのハロウィンに どうぞおでかけください。

 

 

それにしても、編集者Yは紫タマネギのかつら似合いすぎだわ。〆切の恐怖が増しそう。

これで打ち合わせに現れても驚かないよ。

驚かないといえば、こんな格好で店内の絵本を立ち読みしていても、ブックハウスカフェのお客さんは いたって平静でした。

このお店には、しばしばふしぎなことが起きるので慣れているのか、そもそも、ふしぎを受け入れられる人たちばかりが お客さんなのか…。

どっちにしても、よいことじゃ。うむ。

 

 

 

子どもたちの魅力的な表情の写真、三枚。

どこからも苦情はきていませんが、あれこれ考えて削除しました。

でも万一、「あらぁ、うちの子の写真、そのままにしてほしかったのに〜」という方がいれば、こっそりコメントください。(^o^)

 

ゴッホの星空 そして夜の嵐

 

ゴッホ絵本のタイトルが確定し、デザインがきまりました。

 

原書は メインタイトルが  "Vincent Can't Sleep " で、副題が "Van Gogh Paints the Night Sky" でしたが、ひっくりかえしました。

だって、いきなり『フィンセントはねむれない』じゃ睡眠障害の本みたいだし、そもそも、フィンセントって誰だか、すぐには わからないですもんね。

そしてこの本では「星月夜」という絵が鍵なので、「夜空」ではなく「星空」にしました。

 

日本語版のタイトル文字は、森枝雄司デザイナーの手作り。

森枝さんは、既存のフォントでも描き文字でもない字を作ってしまう名人です。

副題や著者名も 絵のムーヴマンにあっていて、おもしろいでしょう。

森枝さんて、青い本のときに、とくにうまいので、わたしは「青のデザイナー」と呼んでおります。

 

あ…。

副題が「フィンセントは ねむ…ない」になってるのは、ちょっとしたアクシデントね。

この段階では、こんなことも、まま起こります。(^_^;)

 

それはともかく、いったいなぜ「フィンセントは ねむない」のか?

 

ゴッホときいて多くの人が思いうかべるのは、ひまわりやアイリス、麦畑など、明るい陽ざしの中の昼の絵ですよね。なんたって炎の人ゴッホですから。

ところがこの本の著者によれば、ゴッホは昼ではなく、夜の人だったというのです。

 

フィンセント・ファン・ゴッホは、子どもの頃から夜中に家をぬけだして、広大な荒れ野を一人でずんずん歩くのがすきだったそうです。

9歳か10歳のときに6マイルも離れた隣国ベルギーまで歩いていってしまったことも。

嵐の夜には、ことのほか心がおどったとか。

もちろん両親はきつく叱りましたが、フィンセント少年にとっては、荒々しい自然の息吹を肌で感じることが 無上の喜びだったようです。

たしかに夜は美しく、神秘にみちています。

 

もっともフィンセントが「ねむれなかった」のは、そうした心浮きたつ理由だけではなく、昼間の社会に居場所がみつけられなかったからでもありました。

焦りや不安、怒りは、ひとを安眠から遠ざけます。

フィンセントの人生は、ねむれぬ夜の連続でした。

 

「星月夜」は、わたしがもっとも好きなゴッホの絵ですが、死の一年ほど前に、鉄格子のはまった精神病院の病室でねむれぬ夜をすごし、朝になると、医師の許可を得て階下の画室に降りていって描いた絵だそうです。

 

 

 

今夜は台風24号が日本を走り抜けます。

記録的な暴風雨になるとのことで、なんだか胸がざわざわします。

ゴッホが魅了された自然の壮大な力を見せつけられることになりそうですが、どうか被害がすくなくてすみますように…。