わたあめ製造機

 

 

わたあめを作ったことはありますか?

 

子どものころ、うちに小さな わたあめ製造機がありました。

ザラメを一匙投入して、スイッチオン。

やがて白い雲のようなものがふわふわと出てきます。

それを割り箸でからめながら、くるくるまいて、わたあめにするのです。

 

うちになぜ、そんな機械があったのか。

母にたずねてみても、「さあねえ。お祭りの景品かしら、誰かにもらったのかしら」。

亡くなった父は甘党だったから、わたしと妹を喜ばせようと買って抱えてきたのかも。

けれどもちろん、日常的にわたあめを作ったわけでもなく「何回か使って、畳屋さんの坊やにあげちゃった」のだそうです。

 

わたしは物語をつくるときに、しばしば、この わたあめ作りを思い出します。

 

物語の「もと」は、ザラメ。

茶色っぽくて、いろんな雑味があるザラメ。

これがなければ始まらないのだけど、姿をかえて、ほわほわと白い蒸気のようにわいてくるものは、なんとも儚く、たよりない。

夢か幻のようで、ほとんど気体にしかみえない。

 

でも、割り箸で注意深く ひとつところに巻きつけていくと、そのうちに固体になる。

指でさわれて、ぺろりと舐めて、はむっと口にできるものになる。

 

ひとしきり、子どもの笑顔を誘うことはできる。

ごはんほど、大切ではないけれど。

甘さに飽きて、じきに、ぽいと捨てられるけど。

それでも、ふとした拍子に、もしかしたら何十年か後にも、ぼんやり懐かしく思い出してもらえるかもしれない。

 

…そんなところまで。

 

 

 

線画と短い文章で織りなす、すこし長めの物語絵本。

こんどは、男の子を主人公にしてつくっています。

 

最初にザラメを投入してから、なんともう一年が過ぎていました。

珍しいことではありません。

ザラメを替えたり、機械のつまりを修理したり、停電したり…の時間が長かったのです。

 

ようやく、ふわふわの白く甘い雲の糸が順調にわいてでてきて、割り箸でくるくる巻いていく段階になりました。

 

あとは職人仕事です。

 

 

 

 

コメント