28年目のやり直し

 

 

「ふしぎをのせたアリエル号」の原書"Amy's Eyes"がアメリカで電子書籍(+紙版も少し)として復刊されることになった件のつづきです。

 

私の挿絵が掲載されるべく進行中ですが、作業がはじまってみると、いろいろありまして…。

 

なんと、作者のケネディさんから28年ぶりにダメ出しがでました。

「子どもの家で、エイミイとキャプテンがすわったのは、ソファです。ベンチではありません」

「…はい。すみません。わたしの勘違いでした。ずっと気にしていました。描き直させてください」

…ということで、ソファだけを描いて、むかしのエイミイとキャプテンの絵にはめこむ。

ありがとう、フォトショップ。

 

「それから、オニババがアリエル号の船内で調理する絵は裸火に見えます。木造帆船にとって火災は致命的です。小型の鉄製ストウブにしてください」

「…はい。ごもっともです」

ありがとう、フォトショップ。

 

上記二点については、日本の読者のみなさま、ほんとうにごめんなさい。

ひとえに、わたしの過ちであります。

 

…と、しゅんとしている私に、ケネディさんは、しだいに調子をあげていく。

 

「できればほら、ニガウリ先生がキャプテンの手紙を焼いちゃうとこね、ブリキのくずかごの絵も、描き足してくれないかなあ」

「…え、まあ、いいですけど…」(どうせフォトショだしぃ)

 

…すると間髪入れずにまた、ケネディさんから追撃の長文メールが届く。

 

「ついでに、あの絵も描き足してくれる? ほら、ヒル先生がブリキのくずかごに水をかけてるところ。エイミイが図書室で背伸びをして地図帳をとってるとこもいいよね。パイプの絵はもっと上手に描けるでしょ〜。宝の地図が入った瓶の色は、もっと薄くしてね。キャプテンがステンドグラスをぶち破って脱出するシーンは、やっぱアクションだからほしいよね! それから酒場で黒ずくめの女と対峙するキャプテンの絵は必須ね…(以下つづく。前半だけで軽く20点を超える」

 

あ、あの、そ、それはいくらなんでも…。

ケネディさんの背後では、編集のピーター氏が「無理。ぜったい無理。〆切は来週ですから」とあわてている気配。

 

 

ということで、妥協点としてほんのちょっぴりだけ、絵を描き足している最中です。

28年前のじぶんの絵をまねするのって、かなりツライ。

ちっとも上達していないことがよくわかるから。とほほ。

 

でもケネディさんと「そういえば前も、酒場の乱闘シーンを描いてほしいっていいましたよね。わたし、よっぱらいのケンカには興味ないんで描きませ〜ん」というようなやりとりをしていると、28年分の時差がみるみる消えていきます。

アリエル号の時間は、ずっと変わらずに本の中にあるというのは、ほんとうみたい。

 

そうはいっても、リチャード・ケネディさん86歳。

わたしも老眼で、細い線がみえない。

本の外では、たしかに時間が流れました。

 

(ま、ケネディさんの、海賊船長キンハナみたいな得体のしれなさは健在のようですけれど)

 

 

 

 

 

コメント

おつかれさま!!本の挿絵を確認しました。新しく加わる絵も見たいな〜

  • chie
  • 2018/03/13 13:59