ファン・ホッホ?

 

美術絵本 "Vincent Can't Sleep"。

直訳すれば『ヴィンセントは ねむれない』。

でも、早くもここで翻訳者の悩みは始まります。Vincentって、ヴィンセントでいいの?

 

ゴッホの伝記的な絵本なので、フィンセントにいたしましょう。

ゴッホはオランダ人なので、英語の読み方ではなく、オランダ式発音表記でね。

 

でもでも、じつはオランダ語の発音では、Gogh はゴッホではなく、ホッホらしいですよ。

しかも、日本では「ゴッホ」として定着してしまったけれど、ほんとは Van Gogh が苗字としての一塊です。

 

てことは、オランダ流にこだわれば、ファンホッホさん……。むむう。だれのことじゃ?

 

英語圏の観光客がヴァンゴーというのを、オランダ人は今でもからかってるみたいだけど、世界的VIPとなった彼を ヴィンセント・ヴァンゴーと呼ぶ人口のほうが圧倒的に多いはず。

そもそもゴーギャンなんて、ずっとフランス語の発音で ヴァンサンと呼んでいたようだし。

ひょっとして発音なんて、どうでもいいのかなあ〜?

いや、ここはやはり研究者の諸先生にならって、名はフィンセント、姓はファン・ゴッホ、通称ゴッホ とさせていただきましょう。

 

オランダの片田舎に、教育熱心な知識階級の長男として生まれた彼自身はオランダ語のほかに英語、フランス語、ドイツ語もできました。

フランスで画商の店員として、イギリスで教師として働いたこともあったのです。

(てことは、あっちでヴァンサン、こっちでヴィンセントと呼ばれていたにちがいない…)

 

 

知識欲が旺盛で、記憶力抜群、読書家で、自然を心から愛していたフィンセント。

肉親への情愛も深く、理想も高い人でした。

だけれど、とてもとても生きにくかった。

じぶんと、まわりの人を、つねに傷つけてしまった。

そして人生のさいごの数年間に、画家として火花をちらすほど燃えて尽きた。

 

それはどういうことだったのか、なぜなのか。

多くの書物が残されています。

 

この絵本は、そこに加わるささやかな一冊ですが、生きる喜びを痛いほどうけとめた鋭敏な感受性、学校になじめない苦しさなど、子ども時代に力点をおいて描いています。

 

資料を読みながら、フィンセント少年のきもちに思いをはせる時間がつづきます。

 

 

 

 

 

 

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