カレン語だぞ ビルマ語だぞ

 

『せかいでいちばんつよい国』は、わたしが2004年に翻訳した絵本です。

 

大きな国の人びとは、じぶんたちの暮らしほど素敵なものはないと信じていました。

だから世界中の人を幸せにするために、つぎつぎに戦争をしかけて、あらゆる国を征服していったのです。

ところが、さいごにたったひとつ残った小さな国に軍隊をさしむけてみれば、なんと、兵隊がひとりもいないではありませんか。

うーむ、これでは戦争ができません…。

 

作者のデビッド・マッキーは『ぞうのエルマー』で有名な絵本作家ですが、彼の本領は鋭い社会風刺にあります。

ブッシュ大統領の中東政策への抗議として、この本を書きました。

 

けれど、すぐれた絵本は普遍的なものです。

日本での初版から15年近くたち、あきらかに読まれ方がかわってきました。

当初、日本の読者は、どちらかといえば対岸の火事的な寓話として読んでいたはず。

でも今はじぶんたちの国が「大きな国」になるのか、「小さな国」でいるのかと切実に揺れているようなのです。

いろんなところで話題になり、順調に版を重ねています。

うれしいはずの重版ですが、担当編集者の鈴木真紀さんと複雑なためいきをついています。

 

 

この本が、シャンティ国際ボランティア会の「絵本を届ける運動」リストに加わりました。

参加費は一冊2,500円で、山岳民族のカレン語と、ビルマ語の2種類が用意されています。

わたしも一冊ずつ申し込んでみました。

 

絵本とシールが送られてきたので、シールを指示どおりに切って、裏紙をはがして、日本語テキストの上にぺったん。

貼るときは ちょっと緊張しますが、小一時間で一冊の「翻訳」作業完了。

カレン語もビルマ語も、ともに難民キャンプへの寄贈本となるそうです。

 

難民キャンプの子どもたちが、この本を読むのか…。

その子たちの顔を想像しながら、なんともいえない思いで、コケシのようなかたちの文字のシールを貼りました。

 

だけど、うん、おもしろい。

字が読めない人のきもちが、ちょっとわかって、なんか新鮮。

なにが書かれているか、ぜんぜん わからないんだもーん。

これって ほんとうに文字なの?ってレベル(*_*)

 

でも、日本のわたしにはずっとちんぷんかんぷんのままでも、ミャンマーの難民キャンプでこの一冊を手にとる子は、きっと、ここから世界をのぞく。

この先この字がもっとすらすら読めるようになって、いろんな本に手をのばし、世界中のいろんな人の考えに触れるはず。

そうあってほしい。

切実に。

 

シール貼りの作業は簡単なので、小学校中学年以上であればできそうです。

外国のことば、文化、文字、地理や歴史、社会問題など、いろんな分野に興味と関心がひろがるにちがいありません。

親子で夏休みの自由研究に、おすすめです。

 

コメント

シャンティ国際ボランティアの絵本を贈る活動、懐かしいです。
絵本の読み聞かせを校内、地域の保育園と活動の輪を広げていった子供たちが、世界に目を向けて何かしたいと言い出し、募金活動で集めたお金で十数冊の絵本を購入して翻訳絵本を作る作業を夏休みにしたことがあります。
東南アジアの見慣れない文字を読み取ろうとしたり、絵本を受け取るであろう国の子供たちに思いを馳せて、シールを切り、貼る作業を行ないました。
どの子も、真剣で、そして楽しそうにしていました。
宅配便で、全国ほとんど1日で物が届く生活しか知らない子供達。海外旅行の経験のある子にとっては、飛行機を使えば、自宅を出て1日でつくその国に絵本が届くのに、船旅だとずいぶんな時間がかかることも新鮮な発見でした。

  • おみたん
  • 2018/06/08 12:01

おお、体験者でしたか!
子どもたちは、一生、忘れませんよね。
ひとりひとりが、彼らなりの方法でその「タネ」を育てていってくれることでしょう。

  • なかがわちひろ
  • 2018/06/10 11:55