101ぴきの奥さん問題

 

白地に黒の犬が101ぴきといえば、アニメ映画の『101匹わんちゃん』!

でなきゃ、ゴージャスな毛皮ファッションの実写映画『101 ワンオーワン』!

 

どちらもディズニーですね。

でも、このお話には、りっぱな原作があります。

私が翻訳をしているのは、その原作の絵本版。

 

1956年にイギリスの作家ドディ・スミスが発表した原作本は、子どもの読み物としては、けっこう分量がある本でした。

日本でも『ダルメシアン 100と1ぴきの犬の物語』(熊谷鉱司訳・文溪堂)として出版されています。

 

魅力は、なんといっても、犬がたくさん出てくること。

犬種ごとの性格もかきわけられているので、ドディ・スミスは、さぞ犬好きだったのだろうと調べてみたら、やっぱりダルメシアンを飼っていたようです。

 

しかも、愛犬の名前はポンゴ!

物語の主人公の雄犬です。

 

では、ポンゴの奥さんの名前は…?

 

「パーデタでしょ」といったあなたは、むかし懐かしいゴールド絵本の『101匹わんちゃん大行進』を読みましたね。

「パーディだよ」といったあなたは、実写映画『ワンオーワン』を見ましたね。

でも、苦笑いをしているあなたは、原作をお読みになったにちがいない。

 

それというのも原作では、パーディタは、ポンゴの奥さんではなく、たまたま同居することになった悲しい境遇の若い雌犬の名前なのです。

パーディタ(Perdita)という名は、ラテン語系の「失われた」という単語からきているとか。

 

ポンゴは、この哀れな若い雌に魅力を感じながらも妻に操をたてましたという微妙な描写もあって、くすっ。

紆余曲折のうえ、彼女もちゃんと「失われていた」ものを見いだしてハッピーエンドにたどりつくのですが、正直いって、この第二の女の存在はなにかとまぎらわしく、ディズニー映画では、ばっさり消されました。

 

そして私が翻訳している絵本版にも、登場しません。

となると、さて、ポンゴの奥さんの、ほんとうのお名前は?

 

原作の1ページめには「結婚と同時に『ミセス・ポンゴ』と名乗るようになったのですが、みんなは、ただミセスと呼んでいます」とあるだけ…。

つまり、名前がない!

女性よ輝け!と、時の政権が首に青筋たてて叫んでいる現代に、それってどーよ?

 

「誰それの奥さん」であることがステータスであった過去の価値観を、未来をになう子どもたちにわたすのは時代錯誤ではあるまいか。

半世紀以上前のディズニーでさえ、そりゃまずいと感じたから、第二の女から名前だけ奪ってその存在を抹消したんだろうに。(←独断と誇張)

 

いやまてよ。

平安時代の女性は「藤原道綱の母」「菅原孝標のむすめ」としか呼ばれず、それどころか、「桐壺」とか「藤壺」とか、おへやの名前ですまされたり、はなはだテキトーでした。

でも男性だって、職務内容で呼び名がころころかわっていたのだから、むしろ、それは日本の文化?

 

いやいや、世界的にみても、一生のうちに名前がかわるところは多い。

個人の名前にこだわるのは、大きな目でみれば現代だけなのかもしれぬ。

 

…などなど、思考はとりとめなく。

 

まあね。

結局のところ、原作のまんま「ミセス」を固有名詞にしちゃうでしょうが、その裏で悶々としていることを、ひそひそ書いておきますね。(^_^;)

 

 

おまけ。

昭和37年発行の、わたしの愛蔵本です。

ぱーでた。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント

絵を見て思い出しました。私もその本を持っていました!!
本の存在など全く記憶していなかったのですが、この画面を見たときに、忘れていた保育園の情景が思い出されました。
絵本の力おそるべし!!!!

  • おみたん
  • 2018/07/02 11:13

ですよね。
わたしも柿本幸造さんの「じゃむじゃむどんくまさん」、それもハードカバーになるまえの絵本を幼稚園の木の机に置いて、そっとさわりながら、きれいな林檎だなあ、ここに行きたいなあと思ったときのことを、よくおぼえています。

  • なかがわちひろ
  • 2018/07/02 23:33