「こわい」は ともだち?

 

"ME and my FEAR" という絵本を翻訳中です。

 

9月に出版されたばかりの『ジャーニー 国境をこえて』(きじとら出版  青山真知子訳)の作者フランチェスカ・サンナによる2作目です。

まず 1作目の『ジャーニー 国境をこえて』がどんな本だったかというと…。

 

抑制のきいた色と線が美しく、どこか懐かしい人形劇のような趣もありますが、戦争で大黒柱を失った母と子が難民となって逃げる苛酷な現実を描いた絵本です。

具体的な地名や時代は、かいてありません。

どこにでも起こりうることだから。

 

旅立ちの前、母は「安心してくらせるところ」をめざして「すごい冒険」をしようと子どもたちを励まします。

冒険の定石どおり、おそろしいこと、つらいことがたくさんあり、旅が進むにつれて母子は「いろんなものを うしろにのこして」いきました。命ひとつだけを抱えて。

そしてようやく新しい土地にたどりつき、読者の心にも希望がともったところで、このすぐれた絵本は閉じられます。

 

 

 

…けれども。

物語にはいつだって、つづきがあるものです。

母と子は、新しい土地で幸せに暮らせたのでしょうか。

「安心してくらせるところ」には戦争がないとしても、言葉がちがいます。

異国のたべものや風習になじむまで、しばらくかかることでしょう。

仕事はみつかったでしょうか。

子どもたちは、学校でいじめられないでしょうか。

 

2作目の "ME and my FEAR" は、そんな「つづきの物語」なのかもしれません。

けれども、この本の魅力は、難民問題を抜きにしても、うなずける内容だということです。

 

主人公の女の子には、ひみつの友だちがいました。

ほかの人にはみえない小さなふしぎな存在で、白くてほわんとしたオバケちゃんみたい。

この友だちの名前は FEAR = 恐怖心。

つまり女の子は、こわがりだったのです。

 

日々、わたしたちは、いろんな物事をこわがったり、警戒したりしてくらしています。

だけどちょっと恥ずかしいから、自分が FEARを抱えていることはなるべく隠します。

でも悪いことばかりじゃないんですよね。

FEARのおかげで注意深くなるので危険な目にあわずに済むし、対処法も学んで少しずつ強くなっていくのです。

 

ね。

だれもが、ふむふむと思える設定でしょ。

フランチェスカ・サンナ、うま〜い!

 

さてと。

翻訳者としての私の課題は、副主人公の FEARちゃんに 日本名をつけてあげること。

そしてつぎに、読者である日本の子どもたちの日常と、この本がじつは強烈に意識している難民問題とをどれくらい重ねるかという匙加減です。

うーむぅ…。

 

 

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