新しい年に

 

新しい年がはじまりました。

仕事始めは、この絵本の翻訳から。

 

女の子とおとうさんが帽子をひょいとあげて挨拶をしています。

こたえているのは、スカーフのようなものをかぶった女性。しりあいでしょうか。

それにしては、女の子の表情が硬い。

 

じつはここ、ニューヨークとおぼしき大都市の地下鉄のホームなのです。

スカーフのようなものは、ヒジャブといって、イスラムの女性のかぶり物。

まわりの人たちは冷ややかな視線を投げ、あるいは無関心な態度で通りすぎていきます。

 

勘のよい方は、ピンときたかしら。

ほんわかと柔らかいタッチの絵本ですが、主人公の女の子は、世界中で繰り広げられるヘイトスピーチやテロのニュースに心を痛めていました。

 

けれど女の子は、ただ怯えるだけではありません。

「どうしたらいいの?」と、両親にたずねます。

幼い子どもにそうたずねられたとき、大人は、なんと答えればよいのでしょう。

 

女の子のおとうさんとおかあさんも、自分を問い直しながら、小さな提案をします。

そしてやがて、女の子みずからも…。

 

 

文を書いたホリー・マギーと画家のパスカル・ルメートルは親しい友人だそうです。

ホリーは2001年にニューヨークテロを身近に体験し、ベルギー人であるパスカルは2016年に連続爆破テロをやはり身近で体験しました。

背筋が凍る恐怖を味わった二人が、世界中の子どもたちにむけて、この絵本をつくったのです。

だいじょうぶ、あなたにもできることがありますよ、と伝えるために。

原書のタイトルは "Come with me"。

 

いい本ですよ。

胸の奥に、小さなともしびを掲げるような。

…と、みなさんにも思っていただけるように仕上げるのが、わたしの初仕事となります。

 

平和な年になりますようにと願いをこめて。

コメント

北広島の講演会でこの絵本を知り、
とっても心が揺れました。
『ハチドリのひとしずく』は僕にとって
凄く刺さるものがありました。
人が何と言おうと、
自分の出来ることを自分の信念のもと行う
そんな大人であり続けたいと思いました。
ありがとうございました。

  • かき
  • 2018/10/20 00:41

うれしいコメントをありがとうございます。
わたしも「ハチドリのひとしずく」という言葉をしったとき、胸がずきんとしました。
ハチドリは、淡々と水を運んだのだと思います。
穏やかな表情をしていただろうと想像します。
そうすることがじぶんの心を安らかにすることもしっていたから。
日々のくらしのなかで、ひとしずくずつ。

  • なかがわちひろ
  • 2018/10/20 09:19