かぼちゃプリン会議

 

プリン会議、佳境です。

 

たかおゆうこさんが絵の8割を描きおえて持ってきてくれました。

でも、これはまだ「原画の原画」です。

 

今回の本の背景は、秋の夜。

その雰囲気をだすために、一部を切り絵にして貼りこみ、それをスキャンをして、さらにデータを操作するのですって。

たかおさんが近作「チュウとチイの あおいやねの ひみつきち」や「くるみの なかには」で見せた独特な効果をあみだす手法です。

 

話にはきいていたものの、わたしも現場をみるのは はじめて。

編集者Yとわたしが、あーでもない、こーでもない、と意見をいうと、たかおさんは、

「じゃあ、こうしてみるか…」と水彩で繊細に描きこまれた小さな切り絵パーツをピリピリはがして、べつの場所にぺたぺた!

 

ひょえ〜〜っ。

たじろぎましたが、うむ、人形芝居の裏方っぽい。魔女っぽいぞ。

 

そういえば、たかおさんは 玩具メーカーのデザイナーだったんだよなあと思い出しました。

けっきょくは、ひとつのことを続けている人ですね。(^o^)

 

 

そして。

本日、ご用意した おやつは、かぼちゃプリンでございます。

絵本のテーマが秋のかぼちゃ祭りですからね。(違)

 

上にのっているのは苺ジャムではありませんよ。

近所で 大枝のまま もらってきた 野生のさくらんぼのジャム。

小さな実がプリンちゃんサイズですが、極小粒から種をとるのが たいへんでした。

 

いっぽう、かぼちゃプリンは超簡単!

めろんぱんママさんのレシピです。

頭脳と精力を使うハードな会議のおやつですから、牛乳の半量をカロリー豊富な生クリームにかえ、薬効に富むシナモンを加えました。たいへん好評でした。おほほほほ。

 

めろんぱんママさんは、絵本ナビ主催の「絵本ごはんコンテスト」の入賞者です。

たかおさんと私は、その完成度の高さと愛らしさに仰天しました。

だって、ほら〜。

 

 

めろんぱんママさんは、その後も、プリンちゃんのおかあさんや、モンブランばあば、おとうさんを作ってくださいました。

ブログ内検索、してみてください。

 

 

 

 

 

 

 

 

まっしろな本

 

本日のお題は猫…。

ではなく、その下の 束見本(つかみほん)とよばれる白い本です。

 

創作絵本の企画がとおり、文章がきまると、判型の相談です。

絵本って、大きさも、縦横の比率もさまざまですよね。

棚にきれいにおさまらないから絵本はキライだと本屋さんにいわれたこともあります…(^_^;) 個人的にはヨクワカル。

 

でも、この大きさや縦横比はキャンバスの寸法なので、絵かきは束見本をにらんで、やる気がでてくるものを感覚的に選びます。

いっぽう編集者は、経験的に読者層がわかるらしい。原価計算もできるでしょう。

 

 

わたしはといえば、まっしろな束見本をみると、白いキャンバスを前に緊張しすぎて、吐きそうになった学生時代を思い出します。

描きたい欲求と、じぶんの力量との差に絶望したから。

 

いまは、そんなことありませんよ。余裕ですぅー。るんるん。

わたしに力量がついたから?

いやあ、むしろ、なにかを失ったからではという疑惑が濃厚ですなあ…。(^o^;)

 

でも表現とは、あいまいな可能性を切り捨てる行為でもあります。

 

この本の「タネ」も、あいまいなまま冷暗所にしまいこんで、たまに眺め、また しまいこむ…をくりかえして、もう十年以上。

このまま発芽率低下で干からびるだろうと思っていましたが、本にしようといってくれる人たちを得て、芽吹きはじめました。

 

とはいえ、おそるおそる陽の光にさらしたとたん、編集者にぷちぷちと余分なわき芽をかかれました。ためらいもなく、確信をもって…(;。;)

このさき、絵かきが わたしの予期せぬ色の花を咲かせることは必定であります……(; O ;)。

お、おう、のぞむところだぜぃ!

 

そうか。

無用な緊張をしなくなったのは、彼らがいるから。

編集者も、絵かきも、デザイナーも、とことん手強い、そしてそのぶん頼もしい仲間達です。

 

 

おおかみ、いってらっしゃい

 

わたしの願いが聞き入れられて、邦題タイトルは『おおかみの おなかの なかで』v(^o^)v

 

表紙のタイトル文字は、描き文字でも、活字でもなく、装丁家の森枝雄司さんがPC技術を駆使してゼロから作ってくれたものです。

すっきりとお洒落でありながら、のほほんとしてユーモラス。

このお話にぴったりです。

 

よーく見てください。

「おおかみ」の「お」の字。三画目が、おおかみの耳になっているんですよ。

2行目の「お」の字の三画目は、形がちがいます。これ、ねずみの耳だって…。(^_^;)

となれば、最後の「で」の濁点は…?

 

森枝さん、芸が細かすぎ!

いったい誰が気づくというのでしょう。

いや、いいんです。ほとんどの読者が気づかなかったとしても、われら作り手が本のお楽しみを求める貪欲さはとどまるところをしらないのだ! (雄々しく叫ぶ)

 

というわけで、本体の作業が完了しました。

デザインを含む日本語版のデータは、本日、原書の出版社にむけて旅立ちます。

ほかの国の言葉とともに地球のどこかのインターナショナルキャンプで印刷され、製本されたのちに、また日本に戻ってくるのです。(…そう、コープロなんですぅ〜(-_-)

 

いってらっしゃい、おおかみ。

忘れたころに、また会おうぜ。(…忘れないけどさ)

 

 

ところで、写真の右上にみえる献辞にご注目を。

文をかいたマック・バーネットは、この本をクリスチャン・ロビンソンに捧げています。

クリスチャン・ロビンソンというのは、ほら、あの絵本作家。→http://chihironn.com/menu/c515150

よい本を次々発表して、いま、ひっぱりだこのヒト。

 

いっぽう、マックと組んで数々の傑作を作ってきたジョン・クラッセンの献辞は一途に「マックへ」。…………………^_^;。

おいマック、いいのかそれで。

そんなとぼけた二人が作ったプロモーション動画も、なかなかです。

 

https://youtu.be/oArGk32ezz8

 

二人がいる場所は……そう、絵本とおなじく、おおかみの おなかの なか!

 

 マック 「おれ、ぜったい、あひる !  だってさ、ファルスタッフって、おれの理想」

                          (訳注: ファルスタッフは シェイクスピア作品に登場する 欲深で好色だけど機知にとみ、なぜか愛されキャラの大食漢)

 ジョン 「ぼくは…ねずみでしょ。いいよ、ねずみで。最後はおいしい役だし」

 

へへへ。やっぱり、すみからすみまで楽しんでつくっていますよね。

 

ひとりになるために

 

きのう、上野の森のおまつりで、愛らしく賢げな15歳の少女からいきなり質問されました。

学校新聞の記事にするのだそうです。

 

「本をかいて、子ども達に伝えたいことはなんですか?」

 

メモ帳とシャーペンをかまえて ひたと見つめている まっすぐな瞳に、うろたえました。

だって、まわりはわいわいお祭り騒ぎ。ぱたぱたはためくテントのお店で、 八百屋のおばさんのような商人口で本をすすめまくっていたんだもの。

 

「そ、そりゃあ、えーっと、この世界には、いろんな楽しみや幸せがあるってこと…を伝えたい…かなあ…?」

…なんて、ありきたりなことを、しどろもどろに答えました。

突撃インタビューって苦手なんだよぉ。

 

少女、にっこりわらって、コクコクうなずく。

「なるほど。前向きに生きるヒントが、本にはいっぱい詰まってるってことですね」

 

それをきいて、ようやく、わたしにスイッチが入りました。

「あ、ちょっとちがう。

前向きでいられるときには、本は必要ない。

でもずっと前向きでなんか、いられないよね。

後ろ向きになって、もぐりこむために、本はあるの。後ろ向き、だいじだよ」

 

少女、ぽかんと口をあけて、目をぱちくりしながら、ゆっくりとうなずく。

「…わかります。…感動しました」

「え〜。ほんとにわかったのぉ? 感動なんか、したのお?」と、いじめるわたし。

「しましたよ! ほんとですよ!」とムキになる少女。かわゆい。

以後、まともなインタビューにならなかったにちがいない…ごめんね〜 (>o<)ゞ

 

 

写真は、その前の日にかいていた小さな水彩画です。

お世話になった方が遠くへいくというので、新たな門出のはなむけにと。

 

「天使のかいかた」のサインや水彩画にわたしが描く天使は、わりと、思いつめた表情をしています。

なぜなら天使というのは、ひとりきりのあなたを見つめているはずだから。

 

前向きにばかり、ことは進まない。

追い風がやんでしまったり。

どうにも力がでなくて、足が前に進まなかったり、しゃがみこみたくなったり。

じぶんだけ、おいてきぼりになったきもちになったり。

 

でも、そんな「ひとり」の時間を味わうことを、子どもたちにしってほしいと思うのです。

書き手のわたしは、ひとりの時間にもぐりこんで本をつむぎ、読み手のあなたは、ひとりの時間の水底で、それをうけとめ、もぐもぐと咀嚼する。必要なものをとっていく。

本とは、そんな地下茎のようなつながりです。

個人も年齢も、国も文化も時代もこえて、脈々と。

 

 

あ、それから。

わかってるよ、ちゃんと伝わったって。

でも、心が大きく動いたときこそ、「感動」のような大袈裟な言葉は使わないほうがいい。

むしろ、おとなしく降参して、ことばをなくしてしまったほうがいい。

あなたのことばの内に充実を、そして、ほんとうの力をもたせるために。

あなたはきっと、ことばをつかえる人になるよ、ももかちゃん。

上野の森 親子ブックフェスタ

 

緑の風がさわやかな上野公園で、今年も、子どもの本のおまつりができました。

 

「プリンちゃん」にサインを書く たかおゆうこさん (…の手と、掲載許可のでた横顔)。

みなさんの注文どおりの素敵なものを、プリンちゃんの頭の上にかいております。

苺や、さくらんぼ、メロンだけでなく、薔薇、パンダ、本、納豆、たこやき…なんてのも。

たかおさんてば、かってに「大賞」を決めているようですよ。

ツイッターを、のぞいてみてください。

https://twitter.com/yukotakao/status/991923467493650432

 

 

おまつりですから、こんなかんじ。

たのしく盛りあげてくれる呼び込みや売り子たちは、担当編集者や辣腕営業スタッフ、そして社長さんだったりします…。(社名は、まあ伏せておこう)。

 

 

午後は徳間書店テントで、おたすけこびとサイン会。

コヨセさんてば、子ども読者には、はりきって似顔絵サインの大サービス !

サインをお待ちの列がどんどん長くなっていくのも、おかまいなし…。。

この、〆切とは別次元の情熱がおたすけこびとの魅力でもあり、わたしと担当編集者(右端)の悩みの種でもあるんですけどね〜。

 

なにはともあれ、読者のみなさんと、

「こっちの本が旬よ」「だったらむしろ、こっちがオススメ」なんて八百屋のおばさんみたいな会話ができるのも、この青空市だからこそ。

 

「天使のかいかた」や「のはらひめ」を読んで育った方が幼稚園や学校の先生になり、子どもたちのために本を買いにきたときくと、うるうるしてしまいます。

 

かわいいほっぺの子どもたちが本をかかえて帰っていく姿をたくさん見られて、つくづく、ふくふく幸せな1日でした。ほわあ…。

 

 

(上野の森 親子ブックフェスタは、4日と5日もつづきます。

 わたしは家で仕事をしますが、アリス館テントには「めいちゃんの500円玉」、廣済堂あかつきテントには、でたてほやほやの翻訳絵本「いっしょにおいでよ」のサイン本を残してきました。どうぞよろしく)

 

 

 

 

そろそろ…

 

きのうは夏日。

気温が30度をこえたところも多かったようです。

 

アトリエの仕事べやには南と西に大きな窓があり、屋根はトタン、外気温の影響をもろに受ける築50年の安普請 (大型車が通るとゆらゆらゆれる)。

熱中症になりそうでした。

 

となれば、そろそろ、クリスマスシーズンです。

クリスマスの本が書店にならびはじめるのは10月。

印刷製本にかかる日数を引くと、中身の〆切は8月。たいていお盆前後。

作家や画家、翻訳家は、真夏に汗をかきながらクリスマスと向きあうのが恒例となります。

 

え。

まだ4月ですって?

それはやはり地球温暖化のせい……ではなく、この本がコープロだからであります。(-_-)

 

コープロ(共同制作)は、数か国分の言語をまとめて地球のどこかで印刷と製本をするため、原稿を提出してから本ができあがるまでの時間がずいぶんかかるのです。

まったくもー。おかげで季節感が狂っちゃうよぉ。(←ややピンボケの非難)

 

 

…と。

前置きが長くなりましたが、クリスマス絵本の "Pick a PINE TREE"。

クリスマスツリーを飾りつけるときの楽しいにぎわいを描いた絵本です。

しかも、物置から人工物のモミの木をひっぱりだすのではなく、家族で生の木を選びにいくところからはじまるのですよ。

 

ん、ちょっとまて。

モミの木って、FIR TREEのはず。

なのに原題は PINE TREE。

あらま、直訳すると『マツの木をえらぼう』!?

それじゃ盆栽の指南書ですわ。

クリスマスツリーといえば、モミの木ですよね。「も〜みの木、も〜みの木〜♪」という歌だってあるもん。

 

じつは、クリスマスツリーにつかわれる木には、モミの仲間、マツの仲間、トウヒの仲間などさまざまな種類があるようです。

要は、冬でも青々とした葉をしげらせる常緑樹であること。

 

だったら日本の松の木でもいいのでは…と思わなくもありませんが、クリスマスツリーの木たちには独特の芳しい香りがあり、こればかりは、ちょっと負けてるかな。

 

なつかしい香りを思い、クリスマスムードにひたっています。

 

 

 

 

 

どんぶらこ…と到着


翻訳絵本『あかちゃんが どんぶらこ!』

原題は "Baby on Board"

 

八割がた完成しています。

本体だけが刷り上がり、製本されて、お船で どんぶらこっこと日本の港に到着しました。


わたしが翻訳を終えたのは、昨年の12月。

編集部がイギリスの原著出版社に送ったデータは、ほかの国の言葉とともに、まとめて中国で刷られて、それぞれの国へと旅だったというわけです。どんぶらこ。

 

そう、これが悪名高い、いえ、わたしのキライな、いやその、近年とみに増えてきたグローバルな製作方法「コープロ(co-production 共同製作)」です。

まあきっと、どこかのだれかにとっては、いいこともあるのでしょうね。わたしは色々心配だけども。

 

 

なにはともあれ、文は『もものき なしのき プラムのき』などの、昔話&童謡風味の語り手アラン・アールバーグ。

かわいくて達者な絵は「ブルーカンガルー」シリーズの エマ・チチェスター・クラーク。

 

あるひ浜辺で、乳母車にのった赤ちゃんが、大海原へ…。

えっ、そんなぁ〜 という展開ですが、心配ご無用!

お人形達が赤ちゃんを守り、ちゃんとお世話もいたします。

イギリス人コンビの絵本は、スパイスのきいたユーモアが素敵。

古典的な「子ども部屋」の安心感にくわえて、海洋冒険物語の潮の香りも魅力です。

 

日本語版は、ただいま装丁家の森枝雄司さんによって表紙カバーと帯のデザインが進行中。

帯って 日本独特の出版文化のようですよ。腰巻と呼ぶ人もいるとか。

表紙カバーを内側に折り返した部分は 前袖と後ろ袖。

どれも、きものの言葉ですね。

 

写真右上のPC画面に映っているように、本国イギリスでの刊行は6月7日だそうです。

コープロのいいところは、世界同時発売がちょっと楽しいってことでしょうか。

お国柄によって、けっこう遅れるところもあるみたいだけど。

 

さて、日本での出版は、いつかな〜。

 

 

 

 

ファン・ホッホ?

 

美術絵本 "Vincent Can't Sleep"。

直訳すれば『ヴィンセントは ねむれない』。

でも、早くもここで翻訳者の悩みは始まります。Vincentって、ヴィンセントでいいの?

 

ゴッホの伝記的な絵本なので、フィンセントにいたしましょう。

ゴッホはオランダ人なので、英語の読み方ではなく、オランダ式発音表記でね。

 

でもでも、じつはオランダ語の発音では、Gogh はゴッホではなく、ホッホらしいですよ。

しかも、日本では「ゴッホ」として定着してしまったけれど、ほんとは Van Gogh が苗字としての一塊です。

 

てことは、オランダ流にこだわれば、ファンホッホさん……。むむう。だれのことじゃ?

 

英語圏の観光客がヴァンゴーというのを、オランダ人は今でもからかってるみたいだけど、世界的VIPとなった彼を ヴィンセント・ヴァンゴーと呼ぶ人口のほうが圧倒的に多いはず。

そもそもゴーギャンなんて、ずっとフランス語の発音で ヴァンサンと呼んでいたようだし。

ひょっとして発音なんて、どうでもいいのかなあ〜?

いや、ここはやはり研究者の諸先生にならって、名はフィンセント、姓はファン・ゴッホ、通称ゴッホ とさせていただきましょう。

 

オランダの片田舎に、教育熱心な知識階級の長男として生まれた彼自身はオランダ語のほかに英語、フランス語、ドイツ語もできました。

フランスで画商の店員として、イギリスで教師として働いたこともあったのです。

(てことは、あっちでヴァンサン、こっちでヴィンセントと呼ばれていたにちがいない…)

 

 

知識欲が旺盛で、記憶力抜群、読書家で、自然を心から愛していたフィンセント。

肉親への情愛も深く、理想も高い人でした。

だけれど、とてもとても生きにくかった。

じぶんと、まわりの人を、つねに傷つけてしまった。

そして人生のさいごの数年間に、画家として火花をちらすほど燃えて尽きた。

 

それはどういうことだったのか、なぜなのか。

多くの書物が残されています。

 

この絵本は、そこに加わるささやかな一冊ですが、生きる喜びを痛いほどうけとめた鋭敏な感受性、学校になじめない苦しさなど、子ども時代に力点をおいて描いています。

 

資料を読みながら、フィンセント少年のきもちに思いをはせる時間がつづきます。

 

 

 

 

 

 

大江戸プリン

 

見てきちゃいました、都営大江戸線にのってるプリンちゃん。

 

新宿で打ち合わせがあったので、ちょっと早めにでて、駅のホームで電車を4本見送ると、おお、5本目に…!

運動会の校庭で、お豆をころがしたような子ども集団のなかに、我が子をみつけた気分。

 

周囲の視線を気にしつつ、写真まで撮っちゃう…。(ああ、ハズカシ)

 

そのままプリンちゃんと一緒に光が丘まで行くわけにはいかないので、中野坂上にて降車して新宿にもどりました。

ところが、自動改札がバタンと閉じてしまって通ることができません。

あらら、窓口でなんて言い訳しよう…。

正直にすべてを話すのもためらわれたので、

 

 わたし「忘れ物をしたので、家に帰ります」(ウソ)

 駅員氏「お乗りになった駅までの往復料金はいただきます。降りたのは、どこでしたか?」

 わたし「中野坂上です」(ホント)

 駅員氏「………」(それにしちゃ大江戸線内にいた時間が長すぎるよなと、しばし黙考)

 

でも、にっこり笑ってゆるしてくれました。340円。

なぜか、かるく罪悪感。

 

ちょっと疲れた親馬鹿の1日。

でも、たかおゆうこさんに写真を送ったら、喜んでくれたのでヨシとしよう…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おおかみの おなかのなかって?

 

ぴっかぴっかの四月。

ぴかぴかでハイテクな新ビルにお引っ越しをした 徳間書店編集部で打ち合わせ。

革の手帳をひらいているのは、小島範子編集長(…の手)。

 

左下が原書絵本PDFのプリントアウト。原書はまだ届いていません。

表紙の動物たちのギョロ目にピンときた方もいるでしょうか。

そう、ジョン・クラッセンの絵です。

文を書いたのは 相棒のマック・バーネット。

 

わたしは二人のコンビによる絵本を二冊翻訳していますが、文と絵の呼吸がいつも絶妙。

掛け合い漫才みたい。

自分たちもクツクツ笑いながら世界中をくすぐって楽しんでいる いたずらっ子二人組ってかんじです。

 

原題は "THE WOLF THE DUCK & THE MOUSE"。

直訳すると『おおかみ あひる そして ねずみ』。

 

最初のページで、主人公のねずみが おおかみに出会います。

そしてなんと2ページめで、ぱくっと食べられてしまいます…。

そのあとは、おおかみの おなかの中で起きたことの物語。つまり、あひるも、おおかみのおなかの中にいたということ。

だから日本語版のタイトルは『おおかみの おなかの なかで』にしましょうよ〜と、わたしは小島さんに訴えております。

音としても、「お」と「か」と「なか」の重なりが楽しいかと。

 

 

打ち合わせでは、絵に貼り込んだ文章を、声にだしてゆっくりと読んでいきます。

かわりばんこに、何度でも。

ちょっとでも気になったことを ざっくばらんに ざくざく出しあうことが、とても大切。

些細なひっかかりから、大きな問題が炙りだされたり、名案がうかんだりするものです。

すると某所で、小島さんが呟きました。

 

「おおかみは、おなかがいたくなった、ってあるけど、正しくは、吐き気を感じたわけですよね。だって、ねずみと あひるが会ったのは、おおかみの胃でしょ、腸ではなく」

「えっ!?  この種の世界では、口の中は、ぜーんぶ おなかじゃないの?」

「えっ!? …まあねえ…そうねえ。赤ずきんちゃんの場合、おおかみの毛皮を切り裂くとすぐにおばあちゃんが出てきますもんね」

「そうよー。ピノキオなんて、くじらのおなかのなかで くじらの肋骨にランプをかけてなかったっけ?」

「……(目が泳ぐ)……」

 

今回の翻訳に、胃と腸の区別が反映されることはなさそうですが、すこぶる大雑把な内臓観を幼い読者たちに刷り込んでしまうことに若干のためらいと罪悪感をおぼえた私です…。

ま、神話的スケールってことで。(^_^;)

 

 

なにはともあれ。

古典的なような、シュールなような、とぼけた味わいがおかしくて、クヒヒヒヒと笑ってしまう絵本です。

笑えるって、いいなあ…。